企業の実力はブランド力の高さで決まる。中小・ベンチャー企業が行うべきは「テリトリーブランディング」。

その他
2019.02.21
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一般社団法人中小・地方・成長企業のためのネット利活用による販路開拓協議会(略称:ネッパン協議会)が「全国の中小企業やネット企業との交流」「ネットマーケティングの最新情報の取得」を目的に開催しているネッパンプレミアムセミナー。第4回は「マーケティング戦略2018」をテーマに、マーケティング領域で活躍する実践者の方々が、2018年のマーケティングトレンドの総括と2019年以降の見通しについて語りました。

第一部では、中央大学大学院戦略経営研究科教授の田中洋氏が講演しました。ソウルドアウト株式会社社外取締役である田中氏は日本マーケティング学会副会長でもあり、マーケティング戦略・ブランド戦略の領域で第一人者として活躍しています。中小・ベンチャー企業におけるブランド戦略の重要性やブランド戦略を考えるときに意識するべきことについて語った講演の内容を独演形式でご紹介します。

▼第二部:
「中小・ベンチャー企業がブランディング勝者になるために、手軽に始められるPR活動とは。『ストーリー』を見せることがブランディングのカギ。」
https://www.sold-out.co.jp/soulofsoldout/other/20190226

田中 洋(たなか ひろし)
社外取締役
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田中 洋(たなか ひろし)
中央大学大学院戦略経営研究科教授、ソウルドアウト株式会社社外取締役。株式会社電通で大手企業や外資系企業のブランディング戦略の立案と実行に携わり多くの実績を残す。その後、コロンビア大学コロンビア・ビジネススクール客員研究員、法政大学経営学部教授を経て、2008年4月より中央大学大学院戦略経営研究科教授。マーケティング戦略・ブランド戦略の領域で第一人者として活躍。著書『ブランド戦略論』は日本マーケティング学会マーケティング本大賞2018「大賞」と日本広告学会「2018広告学会賞」をダブル受賞。

企業に大きな影響を及ぼす「ブランド力」

これまで、ブランドは表層的なものでサービスや商品の本質ではないと言われてきました。しかし、実質的には企業へ大きな影響を及ぼしています。消費者は購買時にブランド力があるものを選びますし、投資家が判断する指標である株価にもブランド価値が影響します。そのため、中小・ベンチャー企業はスモールビジネスの段階からブランド力を意識する必要があると考えられます。

そもそもブランドとは「消費者の認知システム」です。消費者は、何かニーズが生まれ、ニーズを満たす手段を選ぶとき、ブランドを情報の手掛かりとして決めるからです。この際に自社を選んでもらうには、様々なブランドと比較して相対的に良い印象で思い出してもらう必要があります。例えば、何か食べたいときにマクドナルドという看板を目にした場合、美味しそうと感じるのか、それとも口に合わないと考えるのか、消費者の反応は様々です。このときにプラスの反応を多く得られるブランドが、高いブランド価値を持っていると言えます。

つまり、どれだけ多くの人からプラスの反応を得られるかがブランド価値を決めることになります。良い反応を呼び起こすためのブランド戦略は、商品が売れるための前提条件を作るという意味で重要なのです。

 

自社が独占できる市場を見つける

ブランド戦略の構造は三層から成ります。どの領域にどのようにブランドを構築するかという経営戦略が土台にあり、その上に、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略があります。

ネッパン

中小・ベンチャー企業がブランド戦略を考えるうえで意識すべきことが3つあります。

まずは独占できる市場を見つけること。私はこれを「ブランドテリトリー」と呼んでいます。例えばあるパン屋が新たに開店するとします。「美味しいパン」という打ち出し方では、同じような切り口で売り出している店舗がすでに存在し、優位性を得るのは難しい。しかし「朝食のトーストに最適なおいしい食パン」という切り口で売り出すのはどうでしょうか。切り口が「美味しい」より狭い分、同じように打ち出す店舗は少ないはずなので、この領域では優位性が相対的に高まります。

テリトリーとはすなわち「なわばり」です。自社の商品が優位性を保てるユニークな「なわばり」を見つけたら、次は顧客層を限定することが重要です。始めから全世帯に自社ブランドを知ってもらうのは難しいので、まずは限定された層へ訴求させ、将来的に他の層への訴求を目指します。

最後にインターナルブランディングです。中小・ベンチャー企業においてのブランディングは、社外に対してだけでなく、社員や取引先の関係者に対しても重要な意味を持ちます。会社全体で自社のブランドについて考えることで、社員と社長・幹部の間に溝を作らずに会社の本質や在り方を変えていけます。

この3点に着目しながら、ブランディングが上手く進んでいる事例をご紹介します。

 

顧客の選別と「裏サービス」で量販店との差別化に成功

事例①「でんかのヤマグチ」(東京都町田市)

周囲に家電量販店が多数ある中、売上12億円、18年連続黒字を達成している家電販売店「でんかのヤマグチ」の大きな特徴は、量販店が粗利15%~25%ほどで販売するのに対し、粗利35%という高価格で商品を売っていること。高価格でも売れる理由は、顧客の選別とその顧客にあったサービスの展開にあります。

「でんかのヤマグチ」では、どんなものをいつ、いくらで買ったか綿密に記録した顧客リストを作成。累計購入金額と最終購買日に基づいて顧客を9つに分類した上で、購入金額が低い方や最終購入日から長期間経っている方、町田市から離れた土地に住む方をリストから除き、3万世帯あった顧客リストを1万世帯まで絞りました。さらに9つのセグメントごとにアプローチを変えています。例えば、最後に購入したのが3年前のお客様にはあまりアプローチしない一方、過去1年以内に100万円以上購入したお客様には毎月営業部員が訪問し、かつダイレクトメールを送っています。お客様を厳選することで1世帯あたりのサービスの質を向上させ、量販店との差別化を図っています。

さらに「裏サービス」として、お客様の困りごとを無料で解決する仕組みを設けています。例えば、電球が切れたという問い合わせがあった際に電球を届けるというように、きめ細かいサービスを提供していました。高齢者などの、急な困りごとを自力ですぐに解決することが難しい顧客層に対して、日常的に質の高いサービスを展開することで、何か需要が生まれた時には高価格でも購入してもらえるようにしています。

  • 顧客層:狭い商圏の中で自社に合う顧客を選別、顧客リストの定期的なアップデート、明確な顧客別対応。
  • ブランドテリトリー:高価格でも「裏サービス」を必要とする顧客、エアコン、冷蔵庫など特定商品の強化。

 

大手が避けるテリトリーを独占

事例②株式会社カチタス(群馬県桐生市)

株式会社カチタスは中古住宅再生事業を手掛けていて、買い取りからリフォーム、販売まで一気通貫で行なっています。現在、空き家は全国に820万戸あり、その中には築年数が30年を超え、経年劣化など何らかの問題がある物件も少なくありません。

そのような大手不動産会社が買い取らない物件を低価格でリフォーム・販売していることが大きな特徴です。ターゲットを世帯年収500万円以下の初めて持ち家を所有する子育て世代に設定。大都市圏ではなく人口5万~30万人規模の地方都市を中心に、リフォームした戸建てを1000万~1500万円で販売しています。

PRの側面では、東京、大阪、名古屋以外の地域の低価格なテレビ広告を購入し、知名度を向上させました。さらに、一般的にはリフォーム終了後に新聞折込広告を使用するところを、ネット広告を中心に展開し販売広告宣伝費を大幅に縮小させました。

このように限られたターゲットに宣伝活動を行なった結果、「家を売る先として思い当たる会社」の純粋想起において、大手仲介会社を抑えて1位を獲得しました。加えて、2016年度は全販売物件の約3割についてリフォーム完成前に販売契約が成立しています。

  • 顧客層:年収500万円以下の所得者。
  • ブランドテリトリー:地方、中古一戸建て、マンション・大都市・ハイエンドは狙わない。

 

インターナルブランディングで脱価格競争が実現

事例③ワークスマイルラボ(旧石井事務機センター)(岡山県岡山市)

ワークスマイルラボの前身は石井事務機センターという、事務機器を扱う会社です。同社はある女性社員の精神的な問題での休職をきっかけにインターナルブランディングをスタートさせました。社長・幹部・社員が一体となって経営理念について考え、「社員が笑顔で働ける会社をつくる」という新たな理念のもと改革を行いました。

ビジネススタイルを訪問営業型から来社体験型へ変え、新しい働き方やそれを実現する事務機を自社に来て体験してもらうようにしました。そして商材も事務機から「笑顔あふれるワークスタイル」に転換。その結果、お客様のニーズも「これが欲しい」から「これがしたい」に変化し、脱価格競争が実現しました。事務機による「体験」を販売できる唯一の会社になったのです。

さらに、地元新聞社の就職希望ランキングでは岡山全県中第12位にランクインし、2017年の中小企業庁の後援する「ブランディング事例コンテスト」でも表彰されました。

  • 限られた顧客層:会社の在り方に共鳴してくれる地場企業。
  • ブランドテリトリー:ワークスタイルを売る。
  • インターナルブランディング:経営理念の見直し。

 

田中洋氏統括

これら3社は大手にない強みを活かしながら、大手がターゲットに設定しないテリトリーで挑戦を進めています。大手と比べて資金や事業規模が小さい中小・ベンチャー企業は会社が独自で開拓できる、今まで誰も手をつけていなかった「なわばり」を見つけてまずはそこを占領することがポイントです。そのため、テリトリーから逆算してブランディングすることをおすすめしたいと思います。

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