中小・ベンチャー企業がブランディング勝者になるために、手軽に始められるPR活動とは。「ストーリー」を見せることがブランディングのカギ。

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2019.02.26
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一般社団法人中小・地方・成長企業のためのネット利活用による販路開拓協議会(略称:ネッパン協議会)が「全国の中小企業やネット企業との交流」「ネットマーケティングの最新情報の取得」を目的に開催しているネッパンプレミアムセミナー。第4回は「マーケティング戦略2018」をテーマに、マーケティング領域で活躍する実践者の方々が、2018年のマーケティングトレンドの総括と2019年以降の見通しについて語りました。

第二部では「ブランド構築のためのPR活用法」と題して、第一線で活躍を続ける3人のパネラーの皆さんでパネルディスカッションを開催しました。マーケティングの舞台がデジタルに移行し、「マーケティングの民主化」が到来した中で、中小・ベンチャー企業がブランディング勝者になるためのPR展開や用いるべき手法についてお伝えしています。

▼第一部:社外取締役 田中洋氏の講演
「企業の実力はブランド力の高さで決まる。中小・ベンチャー企業が行うべきは『テリトリーブランディング』。」
https://www.sold-out.co.jp/soulofsoldout/other/20190221

丸岡 吉人(まるおか よしと)
ソウルドアウト株式会社 マーケティング顧問
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丸岡 吉人(まるおか よしと)
株式会社電通にてマーケティング、ブランディング、PRなどの領域で数々の実績を残す。広告・マーケティング領域の第一人者のひとり。マーケティングソリューション局長、iPR局長、2016年7月株式会社電通デジタル代表取締役社長、2017年3月電通総研所長などを歴任。2018年4月より跡見学園女子大学マネジメント学部教授も務める。ソウルドアウト株式会社マーケティング顧問。
高田 敦史(たかだ あつし)
A.T.Marketing Solution CEO
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高田 敦史(たかだ あつし)
A.T.Marketing Solution CEO。1985年にトヨタ自動車株式会社入社後、宣伝部、商品企画部、海外駐在(タイ、シンガポール)、トヨタマーケティングジャパンMarketing Director 等を経て、2012年からグローバルレクサスのブランディングを主導。
吉柳 さおり(きりゅう さおり)
大手PR戦略会社ベクトルグループ 取締役副社長
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吉柳 さおり(きりゅう さおり)
大手PR戦略会社ベクトルグループ取締役副社長。大学在学中にPR会社の株式会社ベクトルにアルバイトとして入社し創業に参画。2002年に取締役に就任。2004年にPR事業会社プラチナムを設立し代表取締役に就任。ベクトルの創業期よりPRの第一線で活躍。
美濃部 哲也(みのべ てつや)
ソウルドアウト株式会社 取締役CMO
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美濃部 哲也(みのべ てつや)
ソウルドアウト株式会社取締役CMO。新卒で株式会社電通に入社しマーケティング部門で活躍後、株式会社サイバーエージェント、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ、株式会社タビオ、株式会社ストライプインターナショナルなどで経営者の側近として実績を残す。2017年にソウルドアウト株式会社に参画。

ブランドは客観的な指標

美濃部:まず、2018年のマーケティング概況を振り返ります。メディア接触時間において、デジタルメディアがマスメディアを上回りました。広告の中でもデジタルが23.6%を占めて、「キャズム」と呼ばれる、一気に社会に普及するラインである17%を上回りました。外資企業もこれまでテレビCMなどで行っていたブランディング施策をデジタルで展開するようになり、スマートフォンが広告媒体の主流になりつつあります。

マーケティングの舞台がデジタルに移行したため、低コスト化が進み、これまでの10分の1の費用でブランディング活動が行えるようになってきています。地方企業や中小・ベンチャー企業もブランディング活動に取り組めるようになり、マーケティングの民主化が一層進んだと言えます。そんな状況で中小・ベンチャー企業はブランディングをしていく上で、どのようなことを大切にしていくと良いのか。パネラーの皆さんとお話ししていければ思います。

はじめに、トヨタ自動車に在籍中レクサスのリブランディングを主導した高田さんにお話を伺います。どのようにリブランディングを進めたのでしょうか。

高田:まず、簡単にレクサスについてお話ししますと、1989年にアメリカで立ち上がった高級車ブランドで、日本には2005年に導入されました。レクサスは世間的には成功したブランドと認識されていますが、2010年頃からユーザーの高年齢化や、日本で想定よりも他社ブランドユーザーを獲得できないといった課題が出てきました。

そこで、トヨタ自動車が行なってきた手法と全く異なるマーケティングを展開しました。トヨタはこれまでマス広告に9割の予算を投入し、商品を宣伝していました。しかし、レクサスはマス広告とイベントとPRに1:1:1の割合で予算を使い、商品ではなくブランド自体の認知に半分以上の予算を割きました。

例として、カフェレストランの開業やショートフィルムの撮影、デザインアワードの開催などがあります。さらに、東京タワーに隈研吾さんにデザインしていただいたお風呂を作り一夜だけ一組のお客様をご招待したり、「hide k 1896」とコラボしたハイセンスなランドセルを販売したりと、車とは全く関係ない企画をどんどん打ち出しました。

レクサスが提供するライフスタイルや価値観を象徴した斬新な企画を行い、その様子をメディアに取り上げていだたいて、ブランドイメージをクールにするのがねらいでした。結果、「レクサスはかっこいい」というネット上の口コミの数が1年半で4倍以上に拡大し、購入者の平均年齢も低下しました。

ネッパン

美濃部:PR会社として共にレクサスのリブランディングに取り組まれていたベクトルの吉柳さんはこのリブランディングの際にどのような点を意識されていましたか。

吉柳PRは他と比較したうえで唯一無二の価値を尖らせるための活動です。リブランディングに取り組み始めたころ、レクサスにはあまりクールなイメージはありませんでした。そのため、レクサスは他の外車に比べてイケているブランドだと思ってもらえる情報環境を作る必要がありました。

その上で、特に情報価値をつけてこまめに発信することを意識していました。ブランド価値とは客観的な指標なので、そのイメージを変える活動をメディアやインフルエンサーなどの第三者的な立場の方に取り上げてもらわなければなりません。

単に「このようなイベントを開催しました」とレクサス側から発信するよりも、「ある社会的課題を解決する技術を開発したことが背景にあって、このイベントを開催しました」というように、価値をつけたほうが深い文脈となり、それを読んだターゲットの中にブランド価値が形成されやすいのです。

美濃部:丸岡先生からお二人に、ご質問はありますか。

丸岡:それまでトヨタが行なってきたブランディング戦略から、コミュニケーションツールと広告内容を変えたのは大きなポイントだと思うのですが、それらを変えた理由はなんだったのでしょうか。

高田まず、コミュニケーションツールにマス広告だけでなく、イベントやPRも加えるようにしたのは、新しい商品やサービスをいち早く採用する層に喜んでもらえるコンテンツを作るためです。その層に利用していただいている様子をマーケット全体に拡散することで、ブランド認知が広まると考えました。

また、広告対象を商品そのものからブランドに変えたのは、車の機能や社名ではなくブランドイメージがお客様の購入意欲を高めるからです。トヨタというコーポレートブランドは安心感を担保するものであって、レクサスブランドの高級感といったイメージとは異なるものでした。高級車を購入されるお客様は、機能に魅力を感じて購入するわけではなく、レクサスが好き、BMWが好きという、ブランドとしての好みを基準に購入される方が大半です。ブランドイメージがお客様の購買行動を大きく左右するので、商品ベースでブランディングとPRを行いました。

吉柳日本人は、自分が好きなものに「このブランドにはこんなストーリーがあるから好き」などとしっかり理由づけすることを好みます。そのため、第三者的な立場にいる信頼できる人や機関が「レクサスはクール」と言っていると、レクサスが好きな自分に納得感がでますし、自信を持って人に勧められるようになります。

ネッパン

 

ストーリーマーケティングでお客様に納得感と情緒的な好感を

美濃部:次は中小・ベンチャー企業においてどのようにブランディングを進めていけばよいのか、具体的な事例と共に見ていきたいと思います。

中小・ベンチャー企業のデジタルマーケティングの課題の一つとして、成長の限界突破が挙げられると思います。リスティング広告を展開して改善を続けていくことによって何度か成長するタイミングはあるものの、いずれ限界が訪れます。成長の頭打ちフェーズに、ブランド戦略をてこ入れすることで限界突破できるケースが多くあります。

ネッパン

中小・ベンチャー企業の場合は、「想いや商品の品質は素晴らしいが、どのように打ち出して良いかわからない。結果的に、不器用な見せ方のままでいる。」といったことが多く見受けられます。世の中に広まり好きになってもらえる存在になるためのコミュニケーション展開をする際に、どのようなことに着目していけばよいのか?具体的な事例を取り上げてお話ししていこうと思います。特にPRで世の中に広まった事例について、吉柳さんからご紹介お願いします。

吉柳:まず岡山県の和菓子ブランド吉兆庵さんです。和菓子メーカーとしては有名ではあるものの、ブランディングやPRには一切取り組んでおらず、一定の時期に一定層のお客様にご購入いただく以上には伸びないフェーズにありました。

和菓子は味の好みがあるので、味ではなく吉兆庵のストーリーを好きになってもらう戦略で進めました。吉兆庵さんはお菓子でアート作品を作ったり、美術館を所有していたりと、和菓子のものづくりの側面を好きになってもらいたいという哲学を持っていました。その姿勢を新聞やオンラインでPRし、価値あるブランドとして認識してもらえるようにしています。

次は香川県小豆島にある井上誠耕園さんです。小豆島のオリーブを盛り上げていこうとリーダー役を担っているオリーブ農園さんです。様々なプロダクトを展開する中、それぞれのプロダクトで採れた時期の異なるオリーブを使うなど、こだわりを持っていらっしゃいます。こだわりやその背景にあるストーリーは、メディアが非常に好むものなんです。井上誠耕園さんはその特徴の発信の仕方に悩んでいらっしゃったので、私たちはストーリーをつくり、伝え方の部分をお手伝いしています。

井上誠耕園

NewsTVを活用している井上誠耕園様


どの中小・ベンチャー企業も、マーケティング担当やPR担当がいないためか、自分たちの客観的な価値を見つけるノウハウが不足していると感じます。PRはマーケット全体を俯瞰して自社の価値を見出すというプロセスから始まります。PR会社として一緒に商品やサービスの素晴らしいところを見つけ、メディア露出や動画配信などを通じてお客様に届けるところまでお手伝いさせていただいています。

丸岡:2つの事例を伺って、ブランディングする意味がすごく腑に落ちました。お客様が実際に購入するのは「もの」ですが、購入していただくためには商品の背後にあるストーリーや会社の姿勢を打ち出すことが購買意欲を引き出すことにつながるんですね。

吉柳:そうです。お客様に「論理的な納得感」と「情緒的な好感」、どちらも生まれるようなPRが理想なので、両方を生むような方法を取るようにしています。例えば、記事でストーリーを知る情報環境を作り、ブランドを推す理由を提供して、お客様自身にブランドを推す納得感を生み出す。そして、動画などでブランドの世界観を伝えることで情緒的な好感を生み出す。両方で攻めるイメージです。

中小・ベンチャー企業も手軽に始められる

ネッパン

美濃部:最後に、中小・ベンチャー企業の方々に向けたメッセージをお願いします。

丸岡:中小・ベンチャー企業は大企業とは異なった特有の悩みがあると思います。中小・ベンチャー企業を経験したことがあるPR専門家にご相談されると、同じ課題感を共有しながら進められるので、うまく進むのではないかと思います。

高田:レクサスのリブランディングを経験し、ブランディングにはPRが重要であることを実感しました。積極的にPRに取り組んで頑張ってほしいと思います。

吉柳:PR会社を使う際、コミュニケーションツールまで決めて依頼するのか、それとも方針を決める前から依頼してかまわないのかなど、どのように使い始めていいかわからないという声もあると思います。いろいろなやり方があるので、具体的には何も決まっていなくてPRを始めたいということだけでも、ご依頼していただいてかまいません。

素早いジャッジメントが必要とされるPRは、意思決定の速い中小・ベンチャー企業こそ成果が出やすいんです。予算が少ないとチャンスがないということでは全くなく、伸びしろが大きいので気軽にチャレンジしていただきたいです。

ネッパン

 

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