中小・ベンチャー企業のブランディング成功の秘訣~ブランドを活用して、新たな市場開拓を~

その他
2019.10.29
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企業や商品、サービスの価値を高めるブランディング。モノや情報が溢れる現在において、ブランド力をあげ、消費者に選んでもらう必要性はより高まっており、中小・ベンチャー企業もブランディングに注力していくことが非常に重要です。今回は、ソウルドアウト株式会社社外取締役で中央大学ビジネススクール教授の田中洋さんに、地方、中小・ベンチャー企業におけるブランディングの重要性や成功の具体例についてお聞きしました。

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田中 洋(たなか ひろし)
中央大学ビジネススクール教授 ソウルドアウト株式会社社外取締役
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田中 洋(たなか ひろし)
株式会社電通で大手企業や外資系企業のブランディング戦略の立案と実行に携わり多くの実績を残す。その後、コロンビア大学コロンビア・ビジネススクール客員研究員、法政大学経営学部教授を経て、2008年4月より中央大学大学院戦略経営研究科教授。マーケティング戦略・ブランド戦略の領域で第一人者として活躍。

ブランディングには、中小・ベンチャー企業ならではの目標設定を

ー田中さんは、ソウルドアウト・マーケティング・ラボでブランディングを取り入れた新たなサービスの開発にも携わっていらっしゃいますよね。中小・ベンチャー企業は、ブランディングをどのように活用すべきだとお考えですか。

ブランディングは、企業や商品、サービスのブランド価値を高め、知名度や好感度を上げる行為です。消費者にとって、ブランドは選択する上での手がかり。良いブランドを作ることができれば、それによって消費者に選んでもらうことができます。ブランディングとは売上を向上させるための前提条件なのです。

その中で、中小・ベンチャー企業がブランディングを実施する際には、大企業との違いを意識する必要があります。大企業と比べると、資源が少なく、マーケティングの規模やスケールが異なるからです。ブランディングによって何を目指すか、目標設定が重要です。

例えば、北海道民のソウルドリンク「ガラナ」(※CASE01)という商品があります。本州では知られていませんが、北海道では知らない人がいないくらい飲まれているドリンクです。ガラナを作っている会社は、本州に規模を拡大する資源はありません。だから、北海道のマーケットに深く浸透することを目標に置いています。

そのため、北海道限定のコンビニと組んで商品を置いてもらうなど、地元の販売チャネルを確保。また、北海道のドリンクとして認知してもらうために、「熊出没注意」ラベルの期間限定商品を売り出すなどの取り組みもしています。このように、「北海道内で浸透する」ことを目標に対してブランディングをし、成功しているんですよね。

※CASE01:株式会社小原 URL:https://www.motto-hakodate.com/obara

 

大企業との差別化のためにも、デジタルは積極的に活用すべき

加えて、ブランディングする際には、他社が参入できないような障壁のあるポジションを築けるかどうかも重要です。大手と同じポジションで戦っても、資源の点で不利な戦いを強いられてしまいます。大企業の侵入を防御し、ニッチプレイヤーになるために活用できると思います。

例えば、コンサートの音響装置などに特化したヒビノ(※CASE02)という会社は、舞台監督の意図に沿って音響機器を取り揃え、一つのシステムとしてまとめることで、監督との信頼関係を獲得しています。大企業では難しい、人と人との密な関係性を築けることを武器に、大企業が入る余地のない状況を作りだしています。

他には、未来工業(※CASE03)という電気関係の部品に使う、プラスチック製品を作っている会社があります。とてもニッチな市場ですが、競合はパナソニックなんですよ。しかも、製品の規格はほとんど法律や政令で決まっているため、製品そのものでは差別化できません。そこで未来工業は、別のアプローチを採用しました。エアコンのホースカバーを作る際、法律では規制されていない点に目をつけて、それまでグレーしかなかったカバーの多色展開を行いました。ホースカバーは家の外壁などに取り付けますから、外壁と同じ色の方が見た目良く仕上がる。そのため工事業者から選んでもらえるようになり、大企業にも負けないブランドを築くことができました。

これまでブランディングはマスメディアを用いた手法が主流で、資源のある大企業しか行うことができませんでした。しかしデジタルが普及して、中小・ベンチャー企業も小さくブランディングを始められるようになりました。大企業との差別化を図り、消費者に選んでもらいやすくなるためにも、デジタルは積極的に活用していくべきだと思います。

ただ、デジタルの難点はアドバタイザーが実感を掴みにくいことです。マスメディアはテレビCMや新聞広告など、実際に見ることができるので「やった」という実感がありました。しかしデジタルでは、広告を出してもターゲットにしか届かないので、本当に広告活動が届いているのか、実感がわかない意思決定者の方が多い。そのため、手応えを感じていただくことが大事だと考えています。

例えばオウンドメディアやSNSなど、限定された範囲で、ターゲットやタイミング、コンテンツを変えるなどして、今までやっていなかった冒険をしてみる。そのことで新たな手応えを得られたらその部分をもっと追求してみる。いろいろな仮説検証を繰り返し、自社に向いたターゲット、ブランディングすべきポジションを見つけていくべきだと思います。

※CASE02 ヒビノ株式会社 URL:https://www.hibino.co.jp/gmc/outline.html
※CASE03 未来工業株式会社 URL:https://www.mirai.co.jp/company/

ブランドは市場開拓のために活用するもの

ー具体的に、中小・ベンチャー企業のブランディングの成功例をお聞きしたいです。

それにはまず、自社にとってのブランディングの必要性を考えるべきだと思います。ポイントになるのは「そもそも、なぜブランドを作らなければいけないのか」。僕は、ブランドをどう作るか、というよりは、ブランドを活用してどう市場を作っていくか、を考えるべきだと思います。

ソフトクリーム総合メーカーの日世(※CASE04)という企業の例を使って説明しましょう。日世では、ソフトクリームを作る機械や、原料となる牛乳やコーンなどを販売していました。個人商店やショッピングモールなどに営業して、ソフトクリームを販売できるサービスを導入してもらうのです。重要なのはサービスを導入してソフトクリームを売ってくれる店が増えることですから、日世自体は黒子に徹し、商品のブランディングはしていませんでした。

しかし、時代が変わるとサービスを導入する店が変化してきました。カーペットが引かれた高級志向のショッピングモールのような業態が増え、ソフトクリームを床に落とすと嫌われることから、そういったモールには進出できなくなったのです。加えて、ソフトクリームを食べるのはほとんど子ども。大人になると食べる人が少なくなるため、少子高齢化の影響をもろに受けることになりました。

そこで日世が取り組んだのがブランディングでした。付加価値の高い、新しいソフトクリームブランドを作ったのです。質の高い牛乳を使ったアイス、ラングドシャのコーン。大人にもデザートとして食べてもらえるプレミアムソフトクリームブランド「クレミア」を作りました。それによって、これまで入れなかった空港ラウンジや高級モールにも進出することができました。

日世は、ブランドを作ることによってこれまでにない市場を見いだすことができました。このように、ブランドは本来新しい市場を作るために活用するべきものだと思うのです。ブランディングを成功させるためには、自社にとってのブランドの必要性を考え、その必要性に対応した戦略を立案し、そして市場開拓のためにブランドを活用するものだと考えていくべきだと思います。

※CASE04 日世株式会社 URL:https://www.nissei-com.co.jp/ab_company.jsp

 

移り変わる市場のなかで、新たな市場を開拓できるかが鍵

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ーまずブランディングをしようとか、新しいブランドを作ろうとか考えてしまいがちですが、市場開拓のためにどう活用できるか考えるべきなのですね。今後、中小・ベンチャー企業はどのようにブランディングに取り組めば良いでしょうか。

今後はどんどんデジタルシフトが進み、より顧客が商品やサービスを選択できる方向に市場が変わっていくでしょう。その中で顧客に選ばれるためには、いかに早くブランドを作り、新しい市場を創出できるかが鍵になってきます。

日本は国内需要が多い国ですが、国内にもまだ未開拓な市場はあります。それを見つけ、独自のブランドを創出することが重要になると思います。

ここでも例を紹介すると、中古住宅の買取からリフォーム、販売までを一気通貫で行うカチタス(※CASE05)という群馬県の会社があります。カチタスは不動産売買などを行う会社でしたが、いち早く空き家問題に目をつけ、空き家を買ってリフォームして販売するというビジネスモデルを確立したのです。

カチタスのターゲットは、年収300〜500万の世帯です。リフォームするのは、駅から遠い、いわゆる普通の物件。駅近でデザイナブルな物件を探せばコストがかかってしまうので、多少不便でも車を持っていれば快適に過ごせる物件を抑え、リーズナブルに仕上げます。代わりに水道管やガス管の整備をクリアし、安く、安心して住める家を作るのです。
ターゲットに合わせて地方で安価にテレビCMを打つことで、「中古住宅の買い取りといえばカチタス」というブランド認知を獲得し、顧客を得て市場を広げていきました。独自のビジネスモデルにより、空き家問題を解決する中古物件の市場を創出したのです。

時代の流れは加速化し、市場は日々変わっていきます。これまでブランドが必要なかった企業も、顧客の変化や競合の出現、外部環境の変化など、既存の市場で戦えなくなることもあるでしょう。その時、新しい市場を開拓する必要性が出てきます。中小・ベンチャー企業は今後ますます、他社に先駆け、自社の強みを生かしたビジネスモデルを作ることが重要になるでしょう。

※CASE05 株式会社カチタス URL:http://katitas.jp/

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