新潟に根ざして築いた「編集力」を強みに、 Iターンした三代目社長が立ち向かう新たな挑戦。

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2019.11.25
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新潟県民に広く浸透している地域情報誌「月刊 新潟Komachi」をはじめ、住宅や自動車、ブライダルなど多分野で出版物やWebメディアを展開する株式会社ニューズ・ライン。今回は、東京からIターン転職をし、3代目社長を務めている代表取締役社長の澤井拓さんに、地方メディアとして成長してきた道のりや今後の展望について、ソウルドアウト株式会社代表取締役会長CGOの荻原がお伺いしました。
 

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澤井拓(さわい たく)
株式会社ニューズ・ライン代表取締役社長

情報をデータベース化し、出版事業で成功

荻原:ニューズ・ラインさんが発行する出版物は、新潟で知らない人がいないほど新潟県民の皆さんに浸透していますよね。澤井さんは三代目ということですが、創業されてからどのように事業を拡張してこられたのですか。

澤井:弊社の創業は1984年。今でこそ地方出版社と見られることが多い弊社ですが、最初は中古車と賃貸住宅の検索サービスを提供する会社として創業しました。さまざまな経営者に会ったり海外に行ったりしてビジネスを学んでいた初代は、データベースを使った事業をしようと考えたのです。

中古車屋や不動産屋を回って、車情報や物件情報をひたすらデータベース化し、商業施設や駅前などに端末を設置して検索できるようにしました。まだ世の中にインターネットという言葉も浸透していなかった時代です。当時は店に足を運ばなければ情報を手に入れることができませんでしたから、その不便を解消しようとしたのです。

荻原:中古車と賃貸を選んだのは、どうしてだったのでしょう。

澤井どちらも1点もので、店を回って商品を比較して購入しなければならなかったからだと思います。店舗ごとに持っている商品は違うけれど、それを比べられるように情報が集まっている場所がなかったんですよね。そこに目をつけて、もっと便利にできるとビジネスにしたんです。

2年ほど続けたと聞いていますが、店舗などに設置した端末の故障が多く、事業自体はうまく行きませんでした。ただ、やっているうちに中古車や賃貸情報のデータベースが構築できていたので、それを効果的に使って雑誌を作るようになったのです。

荻原:はじめから雑誌をやられていた訳ではないんですね。

澤井:そうなんです。ただ雑誌を発行してからは事業を拡大し、1992年には「新潟のHanako※1を作ろう」をコンセプトに、女性をターゲットにした地域情報誌『Komachi』を発行しました。これも地域の店舗を取材して情報をデータベース化し、Webにも展開。携帯電話で「iモード」サイトが立ち上がるとすぐに公式サイトとして参入し、アクセス数を伸ばしました。

その後もブライダル、住宅と同じビジネスモデルで事業を拡大し、さまざまな出版物を発行するようになったのです。ブライダルや住宅も、車と同じで単価が高く、消費者の購入機会が少ない商品を提供しています。なぜなら購入機会が少ない商品は、消費者側に購入のノウハウがたまらず、売り手が優位になりがちだからです。同じ課題がある市場に狙いを定め参入し、消費者にとって有益な情報を提供してきました。

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荻原:情報の非対称性で消費者が不利になりがちな業界に目をつけて、情報をわかりやすく伝えることをコンセプトにされていたんですね。

澤井:2005年に前社長(2代目)が事業を引き継いでからも、しばらくは順調でした。しかし2010年ごろになると潮目が変わりました。当時最も売れていた中古車情報誌の市場に、大手が参入してきたんです。これまで、弊社と新潟県内のもう1社の2社で市場を争っていましたが、3社になったことでバランスが変わりました。市場が激化し売上が思うように上がらず、事業の大黒柱が揺らぎました。

なんとか競合に大手がいない住宅情報誌で収益をたてて乗り切りましたが、このままではまずいのではないか、という危機感が増していきました。

※1 Hanako:マガジンハウスが1988年より出版を始めた20代女性を主要読者とした情報系雑誌

事業の大黒柱が揺らぐ中、改めて「編集力」に立ち返る

荻原:そういった危機感の中で、澤井さんが社長に就任されたのですか。

澤井:このままではまずいという認識が、当時の社長にも経営陣にもあって。そこで私に白羽の矢が立った形です。

私はもともと東京で書籍の編集をしていましたが、27歳のとき妻の実家がある新潟で編集者の求人が出ているのを見つけ、半ば衝動的に応募してニューズ・ラインに入社しました。それからはずっと編集をしていたんです。社長の打診をされた時は、経営幹部に入ってまだ数ヶ月くらいの時期でした。驚きましたね。経営幹部の末席もいい所ですから、多分会社のみんなが驚いたと思います。

荻原:ビジネスモデルを変えなきゃいけないという皆さんの意識があったんでしょうね。

澤井:そうだと思います。私自身も状況を打開するためにはガラッと変えなきゃいけないとは考えていましたが、引き受けるかどうかは正直悩みました。2週間くださいとお願いして、自分の想いを整理したんです。自分なりに、入社以来考えてきたこと、感じてきたこと、やりたいこともありました。できるかどうか確信はないけれど、挑戦する機会をもらったと思って前向きに捉えればいいんじゃないか。そう考えたことに加え、主力メンバーも力になってくれると感じられたので、指名を受けることにしました。

荻原:就任されてからは、どんなことに取り組まれましたか。

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澤井:初年度から始めた新規事業は大きく2つで、一つはポストイン型のフリーペーパーです。ポストイン型のフリーペーパーは、そのエリアのほぼ全戸に確実に届きますから、マスメディアや紙媒体が衰退する中で、相対的には価値を落としていない希有な媒体です。これをインフラとして利用し、色々な取り組みをしたいと考えている所です。
もう一つが住宅のカウンター事業。お客さんと対面機会を持つことで、大手よりも地域に密着している弊社の方がより良い事業ができると思ったのです。すぐに軌道に乗り、現在は事業を拡大しようとしています。

ただ、就任後から危機感を解消するような新しい経営チームやビジネスモデルが作れたかというと、十分ではありませんでした。そこで新しい企業理念を定めて体制を刷新することにしたんです。

荻原:企業理念をつくる際、どのようなことを大切にして進めていったのですか?

澤井企業理念を定める中で、弊社の強みは何かを改めて考えました。私たちは何をすることで新潟の役に立ってきたか。考えると、本質は「編集力」であると思いました。私が編集出身だからそう感じた訳ではありません。「編集力」は雑誌を作るだけではなく、色々なところで使われている力だからです。

例えば毎日の服装も、その日の予定やシーンに合わせて「編集」していますよね。「編集力」は、物事やその背景の情報を収集して分析して企画を立て、目的に基づいて再構成する力。これはあらゆる面で役に立つはずです。要望を聞いてお客さんのことを知り、課題を解決する方法を提案する営業だって情報の収集・企画・再構成をしていると思いますし、商品の棚の陳列や街づくりだって同じだと思います。これまで私たちは雑誌づくりに「編集力」を役立ててきましたが、それだけではなく、もっと広く世の中の役に立ちたい。「編集力」を使って、世の中をもっと楽しくできればと考えています。

就任してから3年経って今ようやく、企業理念を新しくするとともに評価制度や給与体系も見直して、刷新できました。

荻原:私も、ソウルドアウトという会社を作るまで4、5年は構想を温めていました。実際に形にするまで、何度も考えて実験する必要があったんです。すぐに結果を求められるかもしれませんが、簡単なことじゃないですよね。3年という時間が必要だったんだと思います。

編集力と地域に根ざす強みを生かし、新たな挑戦を

荻原:今後は、「編集力」を軸に挑戦していかれるんですね。

澤井:そうですね、うちは出版社だと思っている社員もいますが、出版事業だけではなく、なんのドメインの会社なのかをもう一度定義していきたいと思っています。その中で、社員一人一人にも、編集と何かを掛け合わせて、強みを持って欲しいですね。

「Komachi」では毎年、ラーメン特集号を出しているんですが、スタンプラリーを付録にし、集めたスタンプの数に応じた特典を付けています。30杯でコンプリートなのですが、去年は2ヶ月で1,500人ものコンプリート達成者がいたんですよ。2ヶ月間で30軒のラーメン店を巡るほどのコアなラーメンファンが、少なくとも県内に1,500人はいることがわかったんです。
特集に関わった編集者に「ラーメン伝道師」を名乗るほどラーメン好きな社員がいるんですが、ラーメンを使ってもっと何かできないかと考えて、ラーメンの新メニュー開発をプロデュースしたり、新潟ラーメンのアプリ開発に取り組んだりしているところです。たとえ他の会社が新潟ラーメンのアプリを作ろうと乗り込んできても、彼にはこれまで培ったラーメン店との関係性がありますから、他社にできないことができるはずです。そんな風に、情熱を持って取り組める得意分野が見つかると、社員自身が社会に対して希少価値の高い人材になれるでしょうし、それがどこにも真似できない新しいビジネスのきっかけになると信じています。

一方で、これまでの資産も活用します。雑誌の他に、Webメディアでも新店や閉店・リニューアル情報、お出かけ記事など充実させていきたいです。ただ、紙とWebは全く別物だと考えています。雑誌はテレビや新聞と同じ、一対多のコミュニケーションでした。でもWebは、爆発的に効率良く一対一のコミュニケーションを可能にしたツールなんですよね。だから、紙のノウハウをWebにそのまま転用できるかというと、もちろん違うわけです。今までの「最大公約数に向けた広告ビジネス」という概念の外側にもう一つ領域を創って、そこで我々ができることを考えたいですね。

荻原:御社はかなりの地域データを蓄積しているので、デジタルの情報を経営の戦略上でも活用できそうですね。今後はますます、ターゲット設定と企画編集力が重要になると思いますから。

澤井:そうですね、それも議論していて、今後前向きに検討していきます。特にデジタル戦略については、日本全土でうちと同じように悩んでいる地方の企業さんがたくさんいらっしゃると思うんですよ。全国を狙って考える商売はマーケットの上澄みだけでも成り立つかもしれませんが、地域に根ざしてやっている企業はそれではやっていけない。地域に根ざすことの強みがなんなのか、デジタルにどう生かしていけるのかを、一緒に考える繋がりを作れたらいいと思っています。

「編集力」と地方ならではの強みを生かして、今後も挑戦を続けていきたいです。

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