ラクスルは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げ、さまざまな新しい仕組みを作っている会社です。印刷、広告、物流と、これまでアナログが主流だった業界向けに、インターネットを活用した新しい仕組みを提供しています。
弊社が展開する印刷・広告のシェアリングプラットフォームが「ラクスル」です。全国の提携印刷会社の保有する印刷機の稼働時間を管理し、オンラインで印刷の注文を受けて印刷機が稼働していない空き時間に印刷してもらうことで、高品質な印刷物を安く提供しています。
現在はテレビCM事業も展開しています。テレビCMの裏側でデジタルの指標を活用する仕組みをつくり、デジタルマーケティングのようにPDCAを回し、CPAを追求し、広告効果の最大化を実現しています。最近ではテレビCMを1本からでも放映できるオンラインストアも展開しています。
ラクスルの中で、私が見ているのはマーケティング領域。私は、マーケティングと定義すべきなのはProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4Pだと考えています。4P全てを掛け合わせ、価値創出と効果測定をしていく。そして、企業価値を決める売上高と粗利のうち、売上高を作る顧客数、購入回数、単価の3つを上げていくことがマーケティングの役割だと考えています。
マーケティング施策の成果としては、5年間で約50億を投下し、売上は19倍に増えました。
ラクスルのネット印刷はリピート商材なので、お客様1件を獲得するコストの方が、お客様1件あたりの利益よりも高いです。しかし、1年2年と購入し続けてもらうことで、回収コストによって売上を伸ばせる。数年間使い続けていただくことで利益を出すことができるのです。そのため、マーケティングでは短期的なコストは意識せず、回収コストが合っていればアクセルを踏んできました。5年前に私が入社した当初は粗利の多くを宣伝費に投下していましたが現在は落ち着いています。
最初は、デジタルマーケティングを中心にコストを投下しました。しかしすぐに、成長の限界を迎えたんです。デジタルマーケティングにおける市場規模は、インターネットでの検索数で定義されています。ラクスルでいうと、「ネット印刷」や「チラシ印刷」の検索数が市場規模。その中のシェアを拡大するのが基本的な施策でした。しかし、当時はネット印刷の最大手がラクスルの数十倍の検索数を誇っており、これはゲームオーバーだと思いました。
キーワードで勝てないとなると、サービス名自体での検索数を伸ばし、大手の検索数を超えていくしかありません。「ネット印刷といえばラクスル」と純粋想起してもらえる存在になるべく、リーチできる数に対してコストが安いテレビCMという手段を取ることにしました。
結果として、ここ5年で「ネット印刷」の検索数はほぼ変わっていませんが、「ラクスル」の検索数は飛躍的に伸びました。ネット印刷を検討する際に「ラクスル」を純粋想起して、指名検索してくれる人が増えたのです。限られた検索数の中のシェアを取り合うのもいいですが、デジタルマーケティングの限界を突破するためには、自分たちの会社やサービスが検索され、選ばれる状態を作らなければいけないと思います。
ラクスルの検索ワードの遷移

私が定義しているブランディングとは、「比較されずに選ばれること」。伸びている企業は社名やサービス名の検索数が圧倒的に伸びているんです。カテゴリーを代表するような存在になり、知名度を取っていくことがブランディングだと思います。ラクスルは、結果的にブランディングに成功して比較されなくなったお陰で値下げをせずに商品を販売できるようになり、注文社数と顧客単価の両方をあげることができました。