信念と鈍感力が新規事業成功の鍵。 「任せて任さず」の精神で挑戦に報いるフォローアップを。

その他
2020.03.26
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社会の変化が加速化する中で、その変化に対応した新規事業の重要性が増しています。事業アイデアの考案やビジネスモデルの構築、人材の獲得・育成など、難所の多い新規事業立ち上げは、どの企業も頭を悩ませるところです。今回は、新規事業成功の秘訣について、新規事業の立ち上げやスタートアップ支援の実績を豊富に持つファウストビート株式会社 代表取締役CEO 嶋根 秀幸さんに、ソウルドアウト株式会社 代表取締役会長CGO 荻原 猛がお話を伺いました。

嶋根 秀幸(しまね ひでゆき)
ファウストビート株式会社 代表取締役CEO
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嶋根 秀幸(しまね ひでゆき)
米国ソーシャルゲームベンチャーの日本法人の立ち上げ後、MOVIDA JAPAN社にてスタートアップ支援プログラムの設計・運営を行い2011年から2014年の間にプログラム5期50社への投資を行う。その後、ミスルトゥ社でスタートアップ支援や関連イベントの設計と運用を担当。2013年に現会社を設立し、社外監査役やスタートアップ企業の立ち上げ、新規事業開発のアドバイザーなどパラレルに活動。
荻原 猛(おぎわら たけし)
ソウルドアウト株式会社 代表取締役会長CGO
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荻原 猛(おぎわら たけし)
1973年生まれ。中央大学大学院戦略経営研究科修了。経営修士(マーケティング専攻)。大学卒業後、起業。2000年6月に株式会社オプトに入社。2006年4月に広告部門の執行役員に就任。2009年に当社を設立し、代表取締役社長に就任。著書に『ネットビジネス・ケースブック』(2017年 同文舘出版 田中洋共著)がある。2019年3月より代表取締役会長CGO(=Chief Growth Officer、最高事業成長責任者)に就任。

専門家の支援や先輩企業家らメンターの存在が重要

荻原:最初に、嶋根さんが取り組まれていることを教えてください。

嶋根:新しく事業を作ろうとする人の、側面支援をしています。例えば横浜市がコワーキングスペースで始めた、スタートアップ企業(※1)を支援するアクセラレータープログラム(※2)にメンター(助言者)として参加するなどしていますね。

荻原:スタートアップ支援に関わるようになったきっかけは何だったんですか。

嶋根:起業家・投資家である孫泰蔵さんと現在D4V(Design for Ventures)というベンチャーキャピタル(※3)でパートナーを務めている伊藤健吾さんと2011年にスタートアップへの投資と育成を行うプログラムを立ち上げたことがきっかけです。当時は、アメリカのシリコンバレーでどんどん新しいテクノロジーが生まれ、新しい会社が立ち上がっていた時期でした。シリコンバレーにはそういった会社を成長させるために支援する体系だった仕組みがあるのに、日本にはない。だったら自分たちで作ろうという話になり、スタートアップ企業を支援する仕組みを構築していったんです。

荻原:アメリカのスタートアップ界隈は世界に対して開いている印象があります。先輩起業家などメンターになる人たちも多いですし、日本とは規模が桁違いですよね。動いているお金も大きいですし、ビジネスのバリエーションも違います。

嶋根:世界中からヒト・モノ・カネを集めるだけの魅力と吸引力がある場所だと思います。そのまま真似することはできないので、基本的な部分は踏襲しつつ、日本に合わせた形で仕組みを作っていきました。それまで、自分で一から企画して、営業・受注して、ディレクションもやるという形で新規事業を行ったことはありましたが、ノウハウ化まではできていませんでした。そこで、まずは起業家向けに、教育の仕組みを考えて設計していきました。

会社の作り方や投資・融資を受けることの意味、株主についてなど、基礎的なことから教えましたね。起業家はまず事業を拡大したいという思いがありますから、経営の基礎を勉強するよりも事業に専念してしまいがちなんです。事業の作り方やアイデアを、マーケットフィットさせる方法などを学ぶコミュニティも作りました。専門家を呼んで具体的なアドバイスや支援をいただく他、先輩起業家にも登場してもらい、どういう背景で起業をしたのか、最初にどうやって仲間を集めたのか、上場をいつから考え始めたのかなどを話してもらいました。自分の5年後に起こるかもしれないストーリーを、実際に経験した先輩起業家から聞きたいという人は多かったですね。

荻原新しく事業を始める時、先輩起業家のようなメンターは重要ですよね。私もメンターが4人いて、よく相談しています。役割が分かれていまして、金融系の人、事業系の人、それから“優しい人”です。優しい人は重要ですよ。代表は特にメンタルの維持が重要で、時には自分でケアできる範囲を超えてしまうことがたくさんある。力を借りないと立ち直れないですよ。


※1 スタートアップ企業:新しいビジネスモデルで急成長を目指す、市場開拓フェーズにあるベンチャー企業。創業から間もない企業を指すことが多い。

※2 アクセラレータープログラム:スタートアップ企業に投資や協業などの短期的な支援を行い、ビジネスを成長させるプログラム。

※3 ベンチャーキャピタル:ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)。

新規事業向きの人材は「鈍感力」「強い信念」を持つ

荻原:嶋根さんは数々の事業を見てこられていますが、特に新規事業を作るにはどんな要素が重要だとお考えですか。

嶋根:まず、人ですね。大企業がスタートアップ企業を買収する理由として、その事業が欲しいという以上に、その事業を作った人が欲しいという場合が多いです。企業内の同じ文化の中から違うものを生み出すのは難易度が高い。なので、新規事業を作れる人を外から取ってくるという発想になります。

荻原既存事業を横展開する場合は、自社で成功した人に任せてもうまくいくと思いますが、斜めの新規展開であれば外部の方という選択肢も良いでしょうね。
私は、どういう人が新規事業に向いているかというと、“鈍感力”が重要なのだと考えています。はじめはうまくいかないだろうし、赤字だろうし、他人の目も厳しい。そんな中でもリードしていかないといけないので、多少鈍感なくらいがいいと思っています。

嶋根:同感です。周りから言われることを気にせずに、自分はその世界観でやると決めて、愚直に動くことが重要ですね。

荻原あとは、事業を推し進める信念。信念は、過去の体験や自分の周りで起きた現象を解決したいという、内発的動機から生まれることが多いですね。私はそちらのタイプです。一方で、スタートアップやIT界隈が今後どうなるのかなど、外部環境の変化を読んで、先んじて手を打って事業を起こすセンスを持っているタイプの人もいます。いずれにせよ、周りの声に左右されることなく進む人が多い。

嶋根スタートアップであっても、企業の中で新規事業をやるにしても、鈍感力と信念は必要です。周りからはうまくいかないと絶対に言われます。そのことは受け止めながら、それでも前に進めるという人にしかできないですね。

以前支援したことがある起業家は、みんなで音楽を楽しめるアプリを作っていました。一人が歌を入れると、それを聞いた人がベースやギターやピアノを合わせて、みんなでセッションできるというアプリです。そうそう簡単にスケール(※4)しないモデルなんですよ。でも、代表に「最終的にどうしたいの」と聞いたら、彼は「世界中の1億人と『We Are The World』を歌いたい」と言ったんです。誰に否定されてもそれを貫いて、最終的に大手に企業売却しました。そういう情熱、「ちょっとおかしい」部分は大事だと考えています。

※4 スケール:事業やプロジェクトが拡大していくこと。

ラッキーを運んでくるのは、人との繋がりを大切にする姿勢

荻原:新規事業を立ち上げていく際に必要なことは何でしょうか?

嶋根:人との繋がりですね。人との繋がりを大切にするからこそ、色々と声をかけてもらえるようになり、最終的にラッキーにつながると思っています。うまくいくケースは大体ラッキーなことが多いんですよ。ただ、何もせずに偶然ラッキーが降ってくるのではありません。日頃、人と本当に心で付き合ったからこそ、ラッキーが降ってくるんです。そこに尽きますね。

荻原:その通りですね。私が大事だと思うのは、応援団の数がどれだけいるか。自分の損得抜きで支援してくれる人が、どれだけ周りにいるか。仲間がいる人は成功しやすいのではないでしょうか。そのためにも、日々の仕事に誠実に取り組んだり、約束を守るなどして人間性を磨く必要があると考えています。

嶋根1個1個の出会いを大事にすることが重要なんですよね。まず自分ができることで、先にギブする感覚を持つべきだと思います。それなりの余裕と経験値がないとなかなかできないことですが、何かを提供することを心がけるといいですね。

荻原:情報発信もギブの感覚に近いかもしれません。やりたいことや思いを発信していると、見てくれている人が応援してくれることがありますから。

「任せて任さず」。挑戦者へ報いる愛情を

荻原大好きな松下幸之助さんの著書の中に「任せて任さず」という禅問答のような言葉があります。私の中での答えは、「任せる」というのはディレクションではなくて、モニタリングだということです。定期的に不具合が起きてないかをみて、計画とのずれの原因を分析する時間を作ってあげる。担当者は自分が走りながらだとそれがなかなかできないので、経営者がすべきことだと考えています。嶋根さんは、企業内で新規事業を立ち上げる際、経営者はどうするべきだとお考えですか?

嶋根事業を任せるというのは、確かに「任せて任さず」なのかもしれません。事業責任者になると、“責任者”という言葉に影響されて、プレッシャーを感じてしまう人が多いです。経営者には気負いすぎないようにしてあげることが求められます。

あとは、ダメだった場合のフォローは考えておく必要がありますね。まず、単発で新規事業を行うのではなく、会社として向かっていきたい方向を明確にした、ポートフォリオを作っておくべきです。事業には伸びるものと伸びないものが出てきますから、経営者は伸びないものをいつ終わりにするのか、状況を見ながら決めなければいけません。そのときに、担当者が納得できるように着地させてあげることが重要になってきます。終わらせ方は大事ですね。

荻原:そうですね。うまくいかなかった人が、再度立ち上がってくるのには時間がかかります。私個人としては、1年くらい休ませてあげることが必要だと思っています。違う部署でメンタルが復活する時間をとってもいいのではないでしょうか。

新規事業やスタートアップは1勝9敗、経営者は簡単にいかないと思っておいた方がいい。既存事業を伸ばすよりも数段難しいと思うので、挑戦者に対してどう報いるのか、フォローするのかは考えてあげてほしいですね。

私は、何度か失敗した人を将来の幹部候補や経営陣にしていけば、ずっとベンチャー企業でいられるのではないかと思っているんですよ。失敗してきたからこそ組織に好影響を与えることもあるので、失敗してもいいという見立てでやっていく優しさ、愛情が大切だと考えています。経営者はすぐに成果を求めてしまいがちですが、少なくても18ヶ月は見た上で判断したいですね。

嶋根それから、中小・ベンチャー企業の経営者の方にお伝えしたいのは、ひとりで悩まないでほしいということです。色々な悩みが出てくると思いますが、自分だけで考えても、なんの準備もできなければうまくいくことはないし、深い傷を負ってしまうかもしれません。準備運動をせずに崖から飛び降りるようなものです。まずは、「本当にそこから飛び降りていいんだっけ?」と探らなければいけないし、いきなり高い所に行かず、低い所から飛び降りる練習をしてみる必要もある。そのために、ソウルドアウトさんのような会社も含めて、対話ができるような組織、コミュニティが必要だと強く感じます。1人で頑張りすぎるのではなく、まずは相談することが大切です。周囲に甘えることも、仕事の1つですね

荻原:そうですね。お客様からのご相談も多岐にわたってきていて、新規事業を立ち上げる際の相談も非常に多くなってきています。今回の嶋根さんからお伺いしたお話を思い出しながら、お客様の挑戦に伴走していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

パンくず

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