スペースシェアを社会のインフラに。プラットフォーム事業につきまとう数々の難局を乗り越えマザーズ上場を果たす。

その他
2020.04.22
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2019年12月に東証マザーズへ新規上場した株式会社スペースマーケット。貸し会議室から球場まで全国1.2万件以上のレンタルスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォームを運営しています。今回は代表取締役社長の重松大輔氏に創業からどのように事業をスケールさせたのか、ハードな課題をどのように乗り越えたのか、ソウルドアウト株式会社 代表取締役会長CGOである荻原猛がお話を伺いました。
※このコンテンツは、2020年1月23日に対談・インタビューしたものです。

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重松 大輔(しげまつ だいすけ)
株式会社スペースマーケット 代表取締役社長
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重松 大輔(しげまつ だいすけ)
1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。2000年東日本電信電話株式会社入社。主に法人営業企画、プロモーション等を担当。2006年、株式会社フォトクリエイトに参画。一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。2013年7月東証マザーズ上場を経験。2014年1月、株式会社スペースマーケットを創業。2016年1月、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指す一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し代表理事に就任。2019年12月に東証マザーズに上場。
荻原 猛(おぎわら たけし)
代表取締役会長CGO
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荻原 猛(おぎわら たけし)
1973年生まれ。中央大学大学院戦略経営研究科修了。経営修士(マーケティング専攻)。大学卒業後、起業。2000年6月に株式会社オプトに入社。2006年4月に広告部門の執行役員に就任。2009年に当社を設立し、代表取締役社長に就任。著書に『ネットビジネス・ケースブック』(2017年 同文舘出版 田中洋共著)がある。2019年3月より代表取締役会長CGO(=Chief Growth Officer、最高事業成長責任者)に就任。

遊休スペースとしての貸し出しだけでなく、タッチポイント(※1)としての利用も

荻原:まずはスペースマーケットさんの事業内容について伺わせてください。

重松スペースマーケットは遊休不動産のシェアリングプラットフォームで、スペースを貸したい方(ホスト)と、スペースを借りたい方(ゲスト)をマッチングさせて、成果報酬で手数料をいただくビジネスモデルです。現在、47都道府県で1.2万件以上のスペースが掲載されており、オフィスビルの会議室や飲食店はもちろんのこと、変わったところで言えばお寺や野球場、銀座のクラブなど、様々なスペースが貸し出されています。ビジネスモデルを考案したきっかけは、前職で仕事をしていた時にブライダル業界の企業と取引することが多く、結婚式場って平日は結構空いているな、と気づいたことです。逆に一般企業は土日にセミナールームやホール、会議室を使わない。空いている時間に空いているスペースを効率的に流通させようと考えました。
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荻原:どのように使っている方が多いですか?

重松:個人・法人問わず、多いのは会議利用です。その次にパーティーですね。居酒屋で行っていた宴会を、キッチン付きのレンタルスペースに変える方が増えています。一緒に料理を作ったり、ケータリングを頼んだりして、準備から後片付けまであわせて4時間くらい借りる方が多いですね。ユニークなもので言えばみんなでボードゲームをやるとか、パーソナルトレーナーがレッスンスペース代わりに使うとか。最近はそういう使い方も増えています。

荻原:法人の会議利用はニーズがあるでしょうね。我々も役員合宿などはスペースマーケットで会議室を探して利用しています。社内の会議室だと集中できない時もありますが、社外でまとまった時間を使えるとアイデアも出やすい気がします。法人が借り手になるだけでなく、自社のスペースを貸し出すこともあるんですよね?

重松:はい、そういう企業も増えています。最近だとスペースマーケットで貸し出す前提で、少し大きめのオフィスを借りるケースもあるようです。スペースとして利益が出ることに加えて宣伝にもなりますし、家賃以上の収入を回収することもあるようで、有効に活用していただいています。

また、もう少しマーケティング目的で、メーカーがショールームを貸し出すこともあります。例えば、家電メーカーさんとポップアップストアに近い形でスペースを作るんです。家電量販店ではお米は炊けませんが、ショールームを使うと、実際に食べてみて、美味しい!を体験することができる。そういった消費者とのタッチポイント(※1)としての機能もあります。

※1 タッチポイント:サービスやコンテンツがユーザーと触れる点のこと。

華々しいスタートを切るも、我慢比べの時期も

荻原:創業時はどのようにサービスを広げていったのでしょうか?

重松プラットフォームビジネスなのでいわゆる鶏と卵の問題があり、ホストとゲスト両方を集めなければいけません。我々も鉄則通り、ホストを獲得し、物件数を増やすことから進めていきました。前職のご縁でブライダル系企業への営業から始めたので、最初は式場だらけでしたね。

あとは、たまたま先輩が鎌倉に持っていた古民家や、お世話になっていた方が持っていたお化け屋敷など、世界観を伝えるためにユニークなスペースを掲載してもらい、リリース時は大きな反響がありました。堀江貴文さんが「これいい」とコメントしてくれたこともあり、華々しいスタートでした。

その反面、貸す方も借りる方も勝手がわからなかったので、最初は本当に大変でした。しばらくはユーザー同士のやり取りの間に入って手動で調整していましたね。先の古民家の先輩が海外に行かれる際には、私が鍵を預かってゲストへ届けにいくこともありました。「駅を降りたのですけどどっちですか?」と電話がきたり、到着された後も「Wi-Fiが繋がりません。ポケットWi-Fiがあると聞いたんですけど」という連絡をいただいたり。このまま全部やっていたら体がもたないな、と思いましたね。

荻原:ご自身で動かれていたこともあったんですね。最初は貸した時に誰が借りるかわからないから不安という声も多そうですね。
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重松:まさに、最初は不安の声が非常に多かったですね。ただ、Uberの創業者が同じことを説明しているんですが、知らない人と車という密室の中で一緒に乗るのは危ないんじゃないかと言われるけれど、意外とそんなことはないはずだという仮説があって、それを防ぐための仕組みもある。結果的にほとんどのマッチングがうまくいっているんです。具体的な仕組みとしては、貸す方・借りる方がお互いに評価をつけること。メルカリなどのサービスがこれだけ広がっているので、だいぶ馴染み深くなっていますよね。我々も同じで、綺麗に使ってくれる人の方が圧倒的に多く、貸す前より綺麗になっているなんてケースもあるようです。

荻原:どこかでサービス的にブレイクスルー(※2)のタイミングがあったんですか?

重松:一つフェーズが変わったのは2015年のハロウィンですね。ハロウィンの時期に仮装をして外を練り歩く人が出てきた際、メイクをして衣装を着たいけど、外でやるのはちょっと、という方がレンタルスペースを借りてくれたんです。

荻原:一度使ってみるという経験が大きいんですね。

重松:大きいですね。うちは市場創造型なので、体験してみるまで価値が分からない。最初のうちは月10万円程度の売上で、そこからじわじわと伸びた感じです。海外の例を見ても、このビジネスは絶対来るなという自信があったので、我慢の時期だと考えていました。

※2 ブレイクスルー:問題や障害を解決、突破すること。

資金繰り課題を乗り越えて、マザーズ上場へ

荻原:これまでで特に大変だった時期はいつですか?

重松:20名前後で月商1,000万円台の時に、シリーズB(※3)の資金調達を行ったのですが、その辺りの時期は本当に大変でしたね。あと1ヶ月で資金調達できないと、資金がショートしてしまう状況でファイナンスが後手後手に回っていたのです。当時、オプトホールディング傘下でベンチャーキャピタル事業を展開するオプトベンチャーズから資金調達の合意は頂いていたものの、オプトホールディングは上場企業なので手続きに時間がかかる。さらに、4月・5月・6月と伸びていた数字が7月になぜか落ちたんです。8月着金予定で取引を進めていたので、資金が本当に調達できるのかどうか最後まで心配しました。あれは痺れました。いつ会社が潰れてもおかしくない状況で、本当に泣きそうでしたね。今でも覚えています。
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荻原:いや痺れますね。大変な時期にどのように自分をコントロールしていましたか?

重松「ここを抜けないと」という使命感に尽きますね。起業したのが37歳なので、やり直しがきかない訳ではないですが、やり直したくないなって。若い起業家と違っておじさんは失敗できないので。子どもも3人いますし。

あとは、お世話になっているメンターや、妻にも支えられました。できていないことばかりだったので理想とのギャップにフラストレーションがありましたが、続けるしかないんですよ。

荻原:確かに、周りや家族に支えられるというのはありますよね。
2019年12月20日には東証マザーズに上場されました。上場はいつ頃から考えていたんですか。

重松:起業するタイミングから考えていました。2013年に前職の株式会社フォトクリエイトが上場して、他にも身近な会社や経営者が上場するのを見ていたので、自分にもできるなと思って。いい意味で勘違いをしたんですよね。

あとは、スペースマーケットを社会のインフラにしていきたいという想いも大きいです。メルカリなどはもはや誰もが当たり前に使う、インフラですよね。例えば100年後、僕がいなくなっても普通に続いている会社、仕組みを作りたかったんです。そのために上場は良い手段だなと。

もちろん簡単ではありませんし、社内にはかなり負荷をかけましたが、その過程を通じて筋肉質な組織になったなという感覚があります。

※3 シリーズB:経営が軌道に乗り安定化、収益がどんどん伸びていく時期。資金調達額目安は数億円から10億円ほど。

チャレンジを後押しするインフラに

荻原:最後に、これからの展開や将来のビジョンについて伺わせてください。

重松社会的に、あらゆる不動産がより細切れになってスポットタイムで可視化できるようになるのは間違いないと思います。駐車場などがわかりやすい例です。もともと月極めとか年間で貸していたものが時間貸しにシフトしていった。オフィスや働き方も同じで、より人が自由にコントロールできるようになっていく。スペースマーケットはきっちりこの流れで伸ばしつつ、一方で体験を豊かにするために、貸し方・借り方を多様化させていきたいと思います。

例えば、ビジネスパーソンが出先で集中する作業場所をスマホで探すサービスなどもこれからどんどん増えていくと思います。もしかすると家もシェアを前提としたものになるかもしれません。少し大きめな家を買って、シェアをしていくことで結果的に早くローンが返せるということも起こり得ます。

荻原:社会の変化に応じて様々な活用方法が生まれていきそうですね。
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重松:そうですね。今も、新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークが広がっていますが、いろんな理由から、家では仕事がしづらいという方もいらっしゃいます。私も、子どもが家にいる状況だと、なかなか集中できないのが正直なところです。
スペースマーケットでは急遽、テレワークを応援する格安のプランを作ってもらえないか、貸し手の皆さんに呼びかけ、応援のための取り組みをスタートしました。

我々は「チャレンジを生み出し、世の中を面白くする」というビジョンを掲げています。独立前に奥さんと事業の壁打ちをする中で、やっぱり世の中をよくするビジネスがしたいというのが大きな軸としてありました。色々考えた中でこの事業にたどり着いたのは、遊休スペースが稼働することで人の流れができるし、チャレンジする人が増えるなと考えたんです。
まさに今回のテレワークも、ある意味チャレンジですよね。
他にも、自分のお店を出す前にスペースを借りて試験的に使う人たちもいます。引退されて副業感覚でチャレンジされる方もいますし、そこで色々なゲストと触れ合ったことで元気になったという声もいただきます。やっぱり商売なので工夫すればするほど喜んでもらえたり、おもてなしをすれば感謝されたり、いい経済圏ができるなというのは創業初期から感じています。

荻原:新しいことを始めようという気持ちが高まったり、挑戦する行動の後押しになったりするわけですね。

重松:実践してみないとそれが果たしていいのか悪いのかわからない、やってみてダメだったらじゃあ次行こう、という繰り返しで、思い立ったらすぐチャレンジできる、そんなスペースを流動化させて世の中の後押しをしていきたいです。

荻原:スペースの流動化がチャレンジを促すわけですね。今後の御社の動きも、そこから生まれるチャレンジも、とても楽しみです。本日はありがとうございました。


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貸し会議室から球場まで全国10000件以上のレンタルスペース情報を掲載している、レンタルスペースの予約サイト「スペースマーケット」

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