中小・ベンチャー企業こそ「運用型テレビCM」を。 ラクスルが目指すマーケティングの民主化とは。

その他
2020.06.23
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

中小・ベンチャー企業にとって 「ハードルが高い」というイメージが先行しがちなテレビCM。しかし最近、ベンチャー企業のCMを見る機会が増えてきたと感じる方も多いのではないでしょうか。その仕掛け人は、ネット印刷事業の展開によって印刷業界に変革をもたらしてきたラクスル株式会社。もともとは自社の事業拡大のためにテレビCMを活用した同社が、そこで培ったノウハウを元に、安価から始められ、効果測定ができる運用型テレビCMサービス「ノバセル」を展開し、テレビCMサービスに革命を起こしています。

サービスの立ち上げから約2年でテレビCMを実施したお客様の数は300社近くに及び、その多くは広告予算の限られる、スタートアップ企業(※1)や中小・ベンチャー企業です。ノバセルとはどんなサービスなのか。なぜ中小・ベンチャー企業の利用が多いのか。ノバセルの事業責任者を務めるラクスル株式会社 取締役CMOの田部正樹氏に、ソウルドアウト株式会社 取締役CMOの美濃部哲也がお話を伺いました。

※このコンテンツは、2020年3月25日に対談・インタビューしたものです。 

※1 スタートアップ企業:新しいビジネスモデルで急成長を目指す、市場開拓フェーズにあるベンチャー企業のこと。
 

田部 正樹(たべ まさき)
ラクスル株式会社 取締役CMO ノバセル事業本部長
プロフィールをみる
田部 正樹(たべ まさき)
大学卒業後、株式会社丸井グループ、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズを経て、2014年8月にラクスル株式会社へ入社。マーケティング本部長を経て、2016年10月から現職に就任。これまでのラクスルの成長を約50億かけてドライブしてきたマーケティングノウハウを詰め込んだ広告事業「ノバセル」を立ち上げ、事業責任者を兼任している。
美濃部 哲也(みのべ てつや)
取締役CMO
プロフィールをみる
美濃部 哲也(みのべ てつや)
1969年生まれ。1993年に株式会社電通に入社。その後、株式会社サイバーエージェント常務取締役、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ取締役営業統括本部長、タビオ株式会社執行役員マーケティング本部長、株式会社ベクトル執行役員などを経て、2017年3月に当社に執行役員として参画。2018年4月より当社取締役CMOに就任。マーケティング、ブランディング、サービス立ち上げなどを通じて、中小・ベンチャー企業の成長を支援。

売上への影響を可視化。テレビCMを安く、効果的に。

美濃部まずは、「ノバセル」について教えてください。

田部:ノバセルはテレビCMにまつわる定量調査、映像制作、放映、効果分析までがワンストップで行えるテレビCMサービスです。これまでは「ラクスルのテレビCM」という名前でしたが、ラクスルの名前では印刷のイメージが強すぎるため、最近名前を変更しました。お客様の事業を「伸ばせる」というサービスの価値を、そのまま名前にしました。また英語表記については「nova(新しい)、sell(売る)」という意図も入れています。

2018年の1月にサービスをリリースし、現在は300社ほどの企業様にご利用いただいています。お客様の中で多いのは大きく2種類で、1つはスタートアップ企業。我々自身がテレビCMで事業を大きく伸ばしたので、同じような成長を期待してサービスをご利用いただくことが多いです。もう1つは地方の中小・ベンチャー企業。これまで「テレビCMは高くて手が出せない」というイメージを持たれていて選択肢として考えてこなかったお客様が、「テレビCMを数10万円で実施できるなんて」と驚きとともに始められるケースが多いです。

画像

サービスの最大の特徴はCMの効果が定量的に見え、マス広告にも関わらず低予算からでも運用できることです。

テレビCMをはじめとした動画系のプロモーションは、事業成長に寄与している実感が得られないことも多いです。一方で、マーケティングに求められるのは、当たり前ですが事業を伸ばすこと。そのためには施策の効果が常に可視化され、その成果が正しく把握されるからこそ、再現性があるということが重要です。そこでノバセルでは、テレビCMが売上にどう影響を与えたのかを即時に可視化することが可能です。したがって、お客様がWeb広告のように、成果を見ながら投下するテレビCMの量、時間帯や番組などを決めていくというPDCAを回すことを可能にしています。

具体的には、Google Analytics(※2)など解析ツールと連携してテレビCMの反響を1本単位で定量的に追いかけるダッシュボードを作り運用しています。

テレビCMは莫大な費用がかかるイメージがありますが、何をすれば成果が出るかを分析しながらテレビCMを運用広告のように実施することで、本数を絞ることができます。その結果、地方エリアで1キャンペーン100万円以下、関東エリアでも2,000万円ほどでテレビCMによる効果的なプロモーションを展開することができます。

img

※2 Google Analytics:Googleが無料で提供するWebページのアクセス解析サービス。

効果測定のため1分単位で変化をウォッチ

美濃部田部さんは2014年にラクスル株式会社に入社されたそうですね。最初のミッションは何だったのでしょうか?

田部:CMO(Chief Marketing Officer)の役職を任されました。ですが、当時のラクスルはまだ従業員20名にも満たない規模。マーケティング担当は私しかいなかったので、マネジメントというよりは自分で手を動かしていました。

私自身に託されたことは大きく2つありました。1つは、自社のサービスを世の中にどう伝えればお客様にとっての最も大きな価値になるのかを考えること。もう1つは、お客様にとって価値のあるメッセージ発信を通じて、会社を爆発的に成長させることでした。

結果としては、立案した戦略が上手くハマり、1年で売上を約4倍に成長させることができました。

美濃部:それはすごいですね。具体的に何をしたのか教えてください。

画像

田部:やみくもに動いても仕方ないので、入社してすぐ自社のサービスが誰にどれだけ認知されていて、なぜ利用してもらえているのかを定量的に調べました。その結果、サービス利用者は、「早くて、安くて、簡単」だから利用していることがわかりました。一方で、ご利用いただけていない人には、それらの強みが伝わっていないことにも気づきました。そして、個人よりも法人に向けたプロモーションを行う方が売上を伸ばす上では効率が良いということも発見しました。

そこで、これまで各社が手間やお金をかけて作っていた印刷物が、より安く簡単にでき、その分の時間やお金をもっと本業そのものに使うことができる、というストーリーでCMを作ったんです。

美濃部:なるほど、ターゲット、ポジショニング、メッセージを決め、テレビCMを打ったのですね。どのようにテレビCMの内容を作り、洗練させていったのかを詳しく教えてください。

田部:いくつかの仮説を作ってCMを制作し、地方エリアで放映します。放映した中から反応の良いものを見つけ、さらに展開して検証していくという戦略で、効果的な映像内容を決めました。具体的には、まず顧客満足度の高さを訴求したものと、カスタマーサポートの魅力を前面に推し出した2種類の映像を作りました。「安さ」も伝えたほうが良いとは思いつつ、真似される可能性もあるので永続的に謳い続けられないと思い、案から外しました。結果的には、最初に立てた仮説が上手くハマり、売上が爆発的に上がったんです。

仮説検証にこだわった背景は、テレビCMで成果が出るだろうと推察していたものの、確証までは持てなかったからです。当時はBtoB事業でマス広告を行う会社はなく前例のない試みでしたし、我々の商品がテレビCMとマッチするのかもわかりませんでした。

そこで、テレビCMのパターンをいくつか作り、費用のかからない地方エリアで放映して効果を比べ、良かったものをさらに展開していく、勝ち抜き戦のような形で進めていきました。1回で当たらなくても最低5回検証できれば正解が見つかるとわかっていたので、検証できる範囲で小分けにして複数パターンのCMを流しました。

CMが放送された日には、Google Analyticsを活用し、分単位・放映地域単位で情報を整理して、何が一番良かったのかを毎日徹底的に自ら分析をしました。その結果、どのCMが効果的だったかはもちろん、どのタイミングでの放映が良いのかまでわかりました。

美濃部:なるほど。そうやって確立した自社の成功パターンを事業化してサービスとして展開しているのがノバセルなのですね。

たったひとりの「熱狂」が新しいサービスを生む

美濃部ノバセル立ち上げ後の反響はいかがでしたか?

田部:サービス立ち上げ直後はほとんど問い合わせがなく苦労しました。テレビCMを安く放映できることを知らない人が多かったので、ハードルを下げるために、赤字覚悟で10万円からサービスの提供をしていました。同じ部署には社員がいなかったので、半年くらいはひとりで試行錯誤していましたね。

美濃部:それは大変ですね。耐えられたのはなぜでしょうか?

田部これまで、事業立ち上げに関わる中で、まずたったひとりの「熱狂」が大事なのだとわかっていたことが大きかったですね。そもそもラクスル自体も、CEOの松本が提携先の企業の社長と食事をしながら熱くビジョンを語り合い、業務提携ができたところから事業の成長がスタートしています。だからこそ、このサービスは僕自身の「熱狂」から始めようと決めていました。

具体的な行動として、あまり得意ではありませんでしたが、メディアでの露出を増やし、セミナーも定期的に開催しました。その上で法人営業に行ったところ「メディアに出ていらっしゃるような忙しい方が、直接来ていただけるのですね」と驚いてもらえましたね。年間で500件ほどの企業様を訪問しました。

画像

美濃部:これまでテレビCMについて考えていなかった企業様にも、多くアプローチされているのだと思います。新しいマーケットを作りたいという想いもあったのでしょうか?

田部:そうですね。私たちのお客様の9割はテレビCMの経験がありません。そんなお客様にお声がけすることで、「うちもテレビCMに挑戦できるかも」という意識改革を起こすことが出来ているのかなと思っています。我々のサービスを低価格で利用し、初めてテレビCMに挑戦されたお客様が、今後全国放送でもどんどんテレビCMを打っていく、なんてことも起きていくと思います。

マーケティングを民主化するために

美濃部:新型コロナウイルス感染症の影響で、日本中の会社がコストカットを進めています。今後、販促費も削減対象となる企業は増えていくかもしれません。ノバセルの方針に影響はあるでしょうか?

田部:企業がいくらコストカットを進めても、単純に売上へ直結する広告は外せません。むしろ、コストパフォーマンスが大きいサービスは売上が伸びていくのだと思います。現に、ネット印刷は世の中がリーマンショックで大変だった2008年頃に伸びた実績があります。ノバセルも売上に直結するサービスとして選んでもらえている状態であり続けるようにしていきます。
 
無駄が削ぎ落とされ、どの会社も筋肉質にならなければならないタイミングが今で、そういう時にこそ選ばれるサービスを、これからも作っていきたいですね。
 
私はいつもお会いする経営者の方に3つの質問をしています。1つ目は「御社が顧客に選ばれる理由は何ですか?」2つ目は「御社が戦っている市場はどこで、どのぐらいの規模ですか?」3つ目が「マーケティングはプロモーションだけだと思っていませんか?」です。

要するに、戦っている武器や場所を把握できているかが重要で、そこがクリアでないならプロモーションをすることはお勧めしません。その代わりに、3つの質問の答えを見つけるために時間を使った方が良いと思っています。競合企業や競合サービスに対して優位性がないサービス、高い価格のサービスはいくら認知されても売れません。逆に、プロダクトさえ良ければ少ない広告費でも売れます。順番としては、価値を決め、サービス・プロダクトを決め、その後やっとプロモーションに入っていくのが正しい順序です。

画像

美濃部:なるほど、ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

田部:日本の中小・ベンチャー企業様に正しい武器を持ってもらうために、ノバセルの磨き込みや拡大に力を入れたいです。

私はこれまで数社でプロモーションやマーケティングに携わっていましたが、リーマンショックを経て、販促費として費用を払う以上、売上を上げられなければ意味がないと感じるようになりました。

ただ、マーケティングを正しく理解している企業様は都内以外では多くはなく、値決めや広告が現状のサービスやプロダクトに合ってないことも多いです。そんな企業様に正しいマーケティングの知識や技術を提供できれば日本がもっとよくなっていくと感じています。
 
もっとマーケティングが民主化した世界の実現に向け、「ノバセル」を育てていきたいです。


■サービス紹介
テレビCMにまつわる映像制作、放映、効果分析までがワンストップで行えるテレビCMサービス「ノバセル」

画像

パンくず

  • ホーム
  • SOUL of SoldOut
  • その他
  • 中小・ベンチャー企業こそ「運用型テレビCM」を。 ラクスルが目指すマーケティングの民主化とは。