これからの時代に活躍する人を生む教育を。 学習塾・予備校業界から教育を変える、注目の日本発・EdTechベンチャーの姿。

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2020.06.30
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急速な少子化に伴い、児童・生徒の数が減少の一途をたどる一方で、市場としては拡大傾向にある教育業界。日本では今、ICT(※)やプログラミング教育と声高に叫ばれてはいますが、黒板を背にした一人の先生の話を、何十人もの児童・生徒が黙々と聞く光景は、昔とほとんど変わっていません。そんな中、学習塾・予備校の教育スタイルをテクノロジーで大きく変えようとしている日本発の注目ベンチャー企業があります。それがAI先生「atama+」を展開するatama plus株式会社。その新しいスタイルは、学習塾・予備校業界に集団塾・個別指導塾とは異なる、「AI個別」という新しい授業スタイルを創り出しています。AIが生徒一人ひとりに最適な学習内容を提案する事業を立ち上げた背景にはどんな想いがあったのか、そしてatama plusは教育をどう変えていきたいと思っているのか、代表取締役 稲田大輔氏に伺いました。

※このコンテンツは、2020年3月24日に対談・インタビューしたものです。 

※ICT:「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指す。

稲田 大輔(いなだ だいすけ)
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稲田 大輔(いなだ だいすけ)
atama plus株式会社 代表取締役。東京大学大学院 情報理工学系研究科修了。2006年三井物産株式会社に入社後、教育事業を立ち上げベネッセとの合弁会社を設立。ベネッセブラジル執行役員、海外Edtech企業投資責任者等を歴任、2017年atama plus株式会社を創業。

AIで生徒一人ひとりの習熟度に合わせた「自分専用カリキュラム」を自動生成

―最初に、atama plusの事業について教えてください。

私たちは全国の学習塾・予備校にSaaSモデルでAI教材「atama+」を提供しています。このAI を活用したラーニングシステムは、生徒一人ひとりの得意、苦手、伸び、つまずき、集中状態、各単元の忘却度などの膨大なデータを収集・分析し、一人ひとりにカスタマイズした「自分専用レッスン」を自動的に作成・提供します。

日本の教育の多くは、教科書の順番通りに学び、一度学べば、各単元の理解が不十分なままでも次に進んでしまいます。

atama+を使った学習では、ある単元を勉強する時、まずその単元の理解に必要な内容のうち、生徒がどこでつまずいているかを診断。診断結果をもとに、単元ごとの理解度に応じて、講義、練習問題、演習、復習など最適なカリキュラムをAIが作成・提供します。つまずいている別の単元まで遡って学習し、基本的な概念を完全に理解してから次に進むため、結果的に最短での学習ができます。

atama+を使った授業を受けた生徒からは「短時間で自分の弱点を見つけられた」「やり始めるととまらなくなる」などの声が聞かれ、約2週間で数学I・Aの大学入試センター模試の得点が約1.5倍にアップしたという成果も出ています。

このようにAIを使って生徒一人ひとりにあったカリキュラムを提供している一方で、私たちは生徒のモチベーションや学習方法を支援する人の力もとても大切だと考えています。

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これまでの教育では、講師が一人ひとりのペースに合わせたきめ細かな学習を提供することに限界がありましたが、教育のパーソナライズはAIの得意分野です。一方で、AIが生徒に声かけをして、生徒をはげます、応援するなどのコミュニケーションをとることはできません。

そこで、私たちは双方の強みを活かして、AIが「ティーチング」を担い、人間の講師が「コーチング」を担う授業スタイルを「AI個別」として提案しています。

AI個別では、講師1人で生徒10~20人を担当し、生徒はatama+を使って勉強を進めます。担当する生徒の学年も学習科目や単元もバラバラです。講師はタブレット上の講師専用アプリ「atama+ COACH」で生徒の学習状況をリアルタイムに把握し、生徒の状況に応じて、声掛けをしたり、つまずいている単元についての理解をサポートしたりします。

AIと人の融合による新しい授業のかたちは、駿台予備学校、城南予備校DUO、栄光の個別ビザビなど全国の塾・予備校1,700教室以上で広がっています。

ブラジルで見つけた幸せの原点

―貴社の創業背景について教えていただけますか。

そもそも、僕自身の人生のミッションとして、人の笑顔を増やしたいという想いがあります。それをビジネスとして仕組みで実現したいと考えていたことから、新卒では幅広い領域での事業づくりに関われる点に魅力を感じ三井物産株式会社に入社しました。

入社2年目に、新規事業としてBtoBの広告サービスを立ち上げた時のこと。大変な準備期間を経て、いよいよサービスを始めたものの、その広告を見たユーザーが誰一人として喜んでおらず、笑顔がないことに気づいたんです。ビジネスとしては成立していましたが、「せっかく事業を立ち上げたのに、僕は誰を幸せにしているんだろう」そんな風に思いました。

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どうしたら人の笑顔を増やせる事業をつくれるのか。手がかりを探す中で、日本とは真逆の国のことを知ってみたいと思いました。日本は世界的にもGDPが高く経済的には豊かなはずなのに、自分が幸せと答える人が少ない国。対して、ブラジルは貧富の差が激しいのに、自分が幸せだと答える人が多い国と耳にしました。ここに行ったら、何かヒントがあるかも知れない。そんな期待をこめて、社内の留学制度を利用してブラジルに行きました。

現地の公立高校に3ヶ月ほど通ってみたのですが、日本の学校での授業と全く異なる光景に驚きました。先生が黒板の前に立って一方通行の授業をするのではなく、生徒と先生が対等にディスカッションしていたのです。家庭においても、子どもたちが伸び伸びと自己表現している姿を見て、幼少期の教育のあり方が、一人ひとりの幸せに繋がっているのかもしれない、と気づきました。

それからブラジルで様々な教育事業を手掛けた末に、帰国。テクノロジーを活用することで日本の教育はもっと良くなると考え、2017年に学生時代の友人たちに声をかけてatama plus株式会社を立ち上げました。

「教育に、人に、社会に、次の可能性を」というミッションを掲げ、学習を一人ひとり最適化することで「基礎学力」を最短で身につけ、その分増える時間で「社会でいきる力」を伸ばすことを目指しています。

コロナ時代を乗り越えるAI個別

―学習塾・予備校で実際に導入するとどんな変化が起こるのでしょうか。

かつて学習塾・予備校は集団授業が主流でしたが、最近は個別指導の需要が伸びています。対して質の高い授業をできる講師の数は限られており、需要と供給のギャップが生まれています。

このギャップを解消するのが「AI個別」という教育スタイルです。一人ひとりにAI先生をつけて完全マンツーマン指導をしながら、人間の講師がコーチングに注力できるようにしています。atama+を使うことで、生徒の学力向上はもちろん、講師不足にも対応できます。

地方では、講師の人材不足がより一層深刻です。特に、理系科目の講師が足りません。生徒はいて個別指導のニーズはあるが、先生が集まりづらく、授業が提供できない、という課題を持つ塾・予備校が多いのです。

atama+であれば、そんな地域による教育格差の課題にもアプローチできると考えています。

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―学習塾・予備校業界への、新型コロナウィルスの影響はどういった状況でしょうか。

大変な状況です。学校が休校になれば、塾や予備校も教室での授業を継続することが難しくなります。

こうした状況を支援するべく、僕たちは学校一斉休校要請が出る少し前から、急ピッチで「atama+ Web版」の開発を進めていました。それまで塾・予備校のタブレット上でしか使えなかったatama+を、自宅のパソコンやスマートフォンなどのブラウザでも使えるようにしたのです。これによって、生徒が自宅にいながらも、通塾する場合と同レベルの授業を提供できるようになりました。

塾の授業時間になると、自宅にいる生徒はパソコンなどを開いて、atama+ Web版で学習を始めます。生徒一人ひとりの学習状態はatama+ COACHから確認できるため、離れた場所でも講師は電話などを使って生徒にコーチングを行います。4月24日時点で、atama+ Web版に切り替えオンライン授業を始めた塾・予備校の教室数は1,200以上にのぼり、お問い合わせも多くいただいていることから、今後も拡大が見込まれます。

このタイミングで塾・予備校でもデジタルシフトが進み、withコロナ、afterコロナ時代を駆け抜けていくかもしれません。

基礎学力と社会で生きる力の両立を

― 今後の事業展開について教えてください。

私たちが目指しているのは、これからの社会で活躍する人たちをたくさん世に生み出す教育づくりです。これからの社会で活躍するための力には2つあると考えていて、1つが「基礎学力」、もう1つが「社会でいきる力」です。社会でいきる力は、受験勉強では問われない、仲間と一緒に働くとか、コミュニケーション力とか、プレゼンテーション力などです。

基礎学力と社会でいきる力の双方が大事だと思いますが、今の日本の教育は、ほとんどの時間を、基礎学力の取得に費やしている状況です。先生も生徒も忙しく、社会でいきる力を養う時間も設けましょうと言ったところで、そんな時間は残っていない。だから、私たちは、テクノロジーの力で基礎学力の習得にかかる時間を短くして、余った時間で社会でいきる力を習得できる、そんな未来をつくりたいと考えています。

直近では「基礎学力」習得にかかる時間の短縮に向けて、国内の塾・予備校市場に注力してサービスを開発・提供していきます。対応できる科目や学年も広げ、コンテンツも充実させていきます。その後は、社会でいきる力を育てる教育はもちろん、海外展開などにも領域を広げていく予定です。


■サービス紹介
AIを利用した、"超" 個別指導型の学習システム「atama+(アタマプラス)」

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