0→1から10→100のフェーズへ。脱ベンチャーとして成長するメディアエンジン

経営・事業
2022.05.24
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2022年4月1日に社長交代を果たしたメディアエンジン。創業者である室谷東吾氏から新社長としてのバトンを受け継いだのは、同社執行役員COOの杉岡秀一氏です。二人の考えるメディアエンジンの強みとは? 社長交代によって変わる点と変わらない点は? これからのビジョンも交えてたっぷり語っていただきました。

杉岡 秀一(すぎおか ひでかず)
メディアエンジン株式会社 代表取締役CEO
室谷 東吾(むろや とうご)

事業拡大のフェーズに合わせて、一年前から代表交代を協議

——このタイミングで代表を交代する理由を教えてください。

室谷:代表交代についてはすでに一年前から協議していました。メディアエンジンは2017年に創業し、2019年の10月にM&Aを通じてソウルドアウトグループに入りました。2022年の今年は博報堂DYグループへの参画を果たし、メディアエンジンの従業員も40名を越え、事業拡大のフェーズとなってきました。僕はどちらかと言うと0を1にすることが得意なタイプだけど、杉岡さんは10を100にしていくことを得意とするタイプ。このタイミングで売上も事業も成長軌道に乗せるべく、杉岡さんにバトンを渡すことを決めました。

杉岡さんは広告代理店のキャリアが長く、2012年には黎明期のソウルドアウトに出向して西日本の統括本部長を務めていた経験があります。僕らはマーケティングについては強いリソースとアセットを持っていますが、広告によって売上を拡大することに関してはそこまで強いケイパビリティを持っていませんでした。杉岡さんの強みはまさにそこにあって、メディアエンジンの新しい代表として適任だと思っています。
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——実際、杉岡さんにバトンを渡してみての感想は?

室谷:杉岡さんには2020年にメディアエンジンの取締役に就任して頂きました。メディアエンジンとソウルドアウトでは会社の文化が大きく異なる部分もあり、最初はハレーションもありました。でも、杉岡さんは周囲からの信頼も厚い人格者で、いろいろな方の意見を聞いて調整することが非常に得意だったので私としても非常に助けられましたね。当時を振り返ると僕が一人だったらかなり苦しかったと思うし、杉岡さんのおかげで実現できたことも多々あります。

社内政治はかっこ悪い

室谷:もう一つ、杉岡さんのキャリアを見ると会社員として上手に出世してきたように感じますが、性格的にはぜんぜん政治に関心がない人だなと思っていて。僕も大企業出身なので、社内でリスクを背負わずにどう生き残るのかだけを考えている人をたくさん見てきましたが、杉岡さんにはそういう側面がまったくないんです。自分よりも会社や社員をどう幸せにするか、ということを第一に考えられる人だと思っていて。会社を創業した経験のある人間からすれば、そういった感情は普通に芽生えるかもしれませんが、会社に途中から参画した人間でこういうタイプはなかなかいないと思っています。なので、自分が作った会社を杉岡さんに任せても、社員の幸せを最大限に考えてくれそうだなという感覚は初期から感じていました。

——社内政治とは無縁であるということですが、杉岡さん自身はその辺をどのように捉えていますか?

杉岡:そういうのがもとから好きじゃないですし、会社のメンバーにしてもクライアントにしても関係を長続きさせるために政治的な判断をメインにしてしまうと、上手く行くことはほぼないと思っています。私自身、会社としてどういう形でやっていくのがベストなのか、メンバーたちとどうやって意思決定していくのが理想なのかを考えることで結果を出してきましたから。
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メディアエンジンの強みは「ベンチャー感」と「仕組み化」

——杉岡さんの考える、室谷さん時代のメディアエンジンの強みはどこですか?

杉岡:ここに関しては大きく二つあるかと思います。メディアエンジンは室谷さんが代表で立ち上げた会社で、設立当初はメンバーも少なく本当になにもないところからスタートしています。そんな中でメンバーたちが自分の領域を決めずに、なんでもオールラウンドにやっていくことで事業を形にしていったというベンチャー感ですね。
もう一つは室谷さんの性格によるものでしょうけれど、仕組み化が非常に上手いことです。メディアエンジンのサービスはメディアを作ることなので、1ヶ月で何百ものコンテンツを納品しています。僕らは今、2,000名ほどのライターさんとネットワークを構築していますが、属人化させてしまうと業務においてスムーズに展開できない部分が出てきてしまいます。なるべく複雑な作業をシンプルな形にして、属人性に頼らない仕組みを構築する必要が出てきますが、この仕組み化がとても上手いと感じます。

——今の杉岡さんのご意見をお聞きして、室谷さんはどのように感じましたか?

室谷:自分で言うのもあれですが、二つとも比較的当たっているかなと(笑)。やっぱりメディアエンジンはM&Aを通じてソウルドアウトグループに入ってきた会社なので、良くも悪くも文化的には差異があると思っています。ベンチャー感、スタートアップ感が強いので、既存の事業をオペレーティブに回すことよりも、なにもないところから新しい価値を生み出すことを得意とするメンバーが多くいます。小さい規模なりに、文化の違う新しい風を起こせる組織なのかなと思っています。

あとは多様な雇用形態を実現している点も強みと考えています。社員に限らず副業や業務委託など、いろんな方とコラボレーションしながらプロジェクトを進めていくのが上手いと自負しています。実現したいことがあったとき自社にリソースがなくても、外部からパートナーを探してきて一緒にプロジェクトを進めていくようなことも頻繁にやっていました。

杉岡:ベンチャー感と仕組み化の上手さに加えて、スピード感もメディアエンジンの強みですね。ソウルドアウトグループの中でリモートワークを最初に採用しましたが、一番小さい組織である僕らの意思決定が遅かったらやっぱり駄目で。ベンチャーとして即座に意思決定をして、即座に検証して、即座に実験する。可能性があるビジネスをスピーディーに判断して実行することに関しては、しっかり引き継いでいくつもりです。

働き方についてもコロナ禍での状況を考えると、多様性を持たせる必要があることは容易に想像できます。正社員、業務委託、インターンといった垣根を外した仕組みを構築できればと考えています。
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組織と社員がともに成長できる環境を作る

——メディアエンジンのこんなところを新しく変えたい、という点があれば教えてください。

杉岡:今までのメディアエンジンは良くも悪くもベンチャーだったので、社員に対しての研修や教育などが手薄でした。そこは今後強化したい点ですね。ベンチャー感を残しつつも、しっかりとOJTを行い社員の市場価値を上げられるような仕組みです。この先社員が50人、70人、100人と増えるにつれてそこはすごく重要なポイントになってくると思いますので、評価制度、社員に対する育成と研修は強化していきます。

会社と個人の成長がマッチするのがベストなので、僕らとしても高い目標を掲げて、そこに対して社員がしっかりとスキルアップして付いてきてくれる。社内で力を付けてメディアエンジンから独立するという展開も可能です。社内での成長も、独立しての起業も選択肢として用意されている環境を作っていきたいですね。

——では最後に、室谷さんが杉岡さんに期待されていることを教えてください。

室谷:すでにメディアエンジンはスタートアップ、ベンチャーのフェーズを抜けたと思っています。社員の人数が100人、200人、300人と増えるにつれて、より再現性の高い組織づくりが求められてくると思います。組織の多様性を担保するとなったとき、先ほど話が上がった一律正社員での雇用といった形ではない時代に即した柔軟な働き方を認めたり、キャリア成長の支援を強化したり、社員が幸福になれるような組織を再現性高く作っていただきたいと個人的には思っています。

あともう一つ、これは個人的なお願いというかメッセージですけれども、ぜひ杉岡カラーを前面に出した会社にしていただけると嬉しいです。杉岡さんは本当に人格者でみんなから応援される人だと思うので。ぜひ杉岡さんがやりたい世界観をアピールしていただければ、それを助けてくれる仲間が集まってくるでしょう。これは僕だけでなくみんなも思っているはずです。最初は迷うことはたくさんあると思うけれど、杉岡さんの人生で得た価値観や哲学に照らし合わせて、どんどん意思決定をして進んでほしいと思っています。
 

パンくず