M&Aは、企業を強くし未来へ繋いでいくための選択肢の一つ。 企業が自らの価値をしっかりと捉えていくべき時代。

その他
2020.02.26
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日本のM&A支援の草分けとして大きな存在感を持つ株式会社日本M&Aセンター。同社はM&Aのゴールを、売り手と買い手がお互いに敬意を持ち、同じビジョンを持って新たなステージへ進めることとしています。今回はM&Aの実態と未来について、日本M&Aセンター上席執行役員、業種特化事業部 事業部長 兼 業界再編部長の渡部恒郎さんに、ソウルドアウト株式会社 代表取締役社長CEOの荒波修が伺いました。
 

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渡部 恒郎(わたなべ つねお)
株式会社日本M&Aセンター 上席執行役員 業種特化事業部 事業部長 兼 業界再編部長
荒波 修(あらなみ おさむ)
ソウルドアウト株式会社 代表取締役社長CEO

日本のM&Aの約8割は中小企業

荒波:まず、日本M&Aセンターの事業内容について教えてください。

渡部:自社を売却したい企業と購入したい企業のマッチングをし、新たな未来を築いていくためのお手伝いをしています。私たちの使命は「M&A業務を通じて企業の『存続と発展』に貢献すること」。1991年の創業以来、譲渡企業と譲受け企業、そしてその関係者の方々がWin-Winとなる、ベストな形でのM&Aが実現するようにフルサポートしています。国内7拠点で日本全国を、シンガポール、インドネシアの海外2拠点でアジア全域をカバーし、主に中小企業の友好的M&Aを支援しています。

我々の特徴は、マッチングするときに売り手のご相談からスタートすること。M&Aの仲介をする多くの企業は、買い手主導で売り手を探していきます。しかし我々は逆で、まずは売り手のご相談にのって、事業、財務、法務などの調査をし、売却の意思が固まってから買い手を探しています。

手掛ける案件は年々増えており、昨年は2008年の約6倍、毎年約20%ずつ案件数が増えている状況です。

M&Aをされる企業は、実は年商2億円から10億円の中小企業が7、8割を占めているんです。最近は、上場企業、売上数百億円クラスの案件や海外の案件も出てきています。

M&Aで事業承継することのメリットとは

荒波:中小企業にとって、M&Aをするメリットはどこにあるのでしょうか?

渡部:まず、会社の透明性と公正性を保てることがメリットだと感じています。中小企業の創業者らが個人で株を持っている状態よりも、売却先の会社が持っている状態の方が、透明性が高まります。今の時代、透明性があり、パブリックな会社に人が集まるようになってきているので、公正な会社づくりをする一つのきっかけになると考えています。

また、メリットが大きいのが事業承継ですね。実際、手掛けているM&Aの約7割は、事業承継です。後継者がいない中小企業の経営者が、事業を売却することで得るものは大きいと思います。実は売り手側の年齢が若くなってきていて、今は55歳くらい。私が入社した当時よりも4、5歳若くなっています。

一概には言えませんが、経営者は65歳くらいを過ぎてくると段々とチャレンジをしにくくなる傾向にあります。例えば、製造業で年商10億円の会社が1億円の機械を買って、だいたい15年で投資の回収計画を立てるとします。経営者が65歳だったら、なかなか投資の判断をしにくいですよね。そうすると、大きな施策が取れなくなっていくので、働いている社員も仕事をする楽しみが減っていってしまいます。加えて、だんだんと判断能力も落ちてくる。それに気づかず経営を続けて、判断を間違えてしまうケースもあります。

そうなる前の、会社が伸びている時期にM&Aをするのは良い手です。まず会社の後継者問題を解消することができますし、経営者としても新たな挑戦をすることができます。理想系は、55歳から60歳くらいの間に売却をし、その後も5年ほどは社長として経営を担い、しっかり次の代に繋ぐ。そうすれば、会社の存続に頭を悩ますことなく、買い手の企業の資産や資本を使いながら、経営者としても挑戦を続けられます。

自分の指示が行き届き、統制が効いている状態を自由だと思う人もいると思いますが、信用力や優秀な人材、より資本がある状態を自由だと感じる経営者も多いです。そういう方にはぜひ、M&Aに踏み切って、企業価値を高め、経営者として違うステージで新しいチャレンジをして欲しいと考えています。それにより、創業者が夢を叶えるケースもあるんです。

例えば、ある電気工事会社の社長は、自社のユニフォームで仕事をしたいという夢を持っていたそうです。しかし現実は、大手企業のユニフォームを着て、下請けの仕事をしなければならない状態でした。しかし、自社を直受けの会社に売却した結果、自社のユニフォームを着て働くことができるようになった。M&Aによって夢を叶えたんです。

他には、会社を買いたいと思っていた社長が、結果的に自社を売却するケースもあります。例えば、薬局を経営していて1店舗だけ地元で買いたいと考える経営者の方がいました。しかし購入に向けいろいろな話を進めていく中で、1店鋪だけを買うよりも1,000店舗の薬局を持っている業界トップの会社に自社を売った方が、システムもよくなるし、仕入れ値も下がる、社員も転勤しやすい、といったメリットが見えてきたんです。結果的に、会社を売却することにしました。こういった事例は多いですね。

海外に比べ、実はわずかしかない敵対的な買収が報道されやすい影響で、日本でもM&Aに対するマイナスイメージがあります。しかし実際は、中小企業のM&Aはミドルリスク・ミドルリターン。私はプレイヤーとして中小企業100社ほどのM&Aを手がけてきましたが、1社も減損していません。売り手のオーナーも経済的に得をしていますし、買い手も回収率が高い。手堅い選択肢だと思います。ハイリスク・ハイリターンなのは上場企業やベンチャー企業、海外の企業のM&Aですね。

中小企業にとって、M&Aは目的によって選びうる、ポジティブな選択肢だと考えています。

情熱をすり合わせ、両社で敬意を持ったM&Aを

荒波:中小企業でM&Aをした際、具体的にどうするとうまくいくのでしょうか。

渡部:うまくいくのは、理解できる業界・業種・地域でM&Aを行う場合が多いですね。ただ、近い業界や業種だからといって、最初からシナジーを織り込んで計算するとうまくいきません。例えば電気工事の会社が空調工事の会社をM&Aして、同じような客層だから両社の商品を抱き合わせで販売しようと考えても、お互いに今の仕事が忙しくて想定通りにはいかなかったりします。新しく何かをやるということは、何かを捨てる必要も出てきます。M&Aをしたから急に新しいことができる、と言うことはなく、何の時間を減らすのかも考えないといけません。

事業面の他に考えておかないといけないのが組織面です。根幹の情熱が向いている方向が一致することが、うまくいくためには重要ですね。全く違った環境で育ってきた同士なので、お互いが尊敬しあって、ちゃんとディスカッションができる間柄になっておく必要があります。M&A前の買収監査の時からいろいろな議論をしておかないと、会計上の調査をして契約に至っても、うまくいかなくなってしまいます。

また、会社の状態がきれいであることも重要ですね。具体的には、会社の財務諸表や人間関係、ドキュメントなどがきれいに整っている会社の方が間違いなく、いい条件の値段が出ます。そういった管理が杜撰だと、後から問題が起きることがほとんどです。

譲受け企業として、どの企業を選ぶかという点では、最初に出てきた会社が一番良い相手であることが多いですね。パッと手をあげてくれるということは、元からニーズがある会社。買いたいという熱意がある企業とのマッチング確度は高いです。

荒波:逆に、M&Aがうまくいかない例を教えてください。

渡部:売り手側の企業の社員が経営者の気持ちを受け止める度量がない場合、途中でダメになってしまうことがあったりします。経営者の決定を受け止めきれない組織だと、社員から無理な要望が出て、舵取りが難しくなってしまうようです。

ただ、今は経済環境が良いので、この10年でM&Aをして会計的に回収ができなかったということはないですね。経済環境が良いときのリスクはほとんどありません。

企業を強くし、遺す手段として

荒波:M&Aは、大きな企業が取り組むものだとお考えの中小・ベンチャー企業の経営者の方々が多かったり、なんとなく悪いイメージをお持ちの方もいて、検討される企業はまだ少ないかもしれません。しかし、今後人口が減少する社会の中で生産性を高めるためにも、会社と会社が一緒になるという選択肢は前向きに検討すべきだと考えています。M&Aの今後の展開について、渡部さんはどのように考えていらっしゃいますか?
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渡部:そうですね、日本は特に、企業に愛着を持っていたり、家族経営で代々引き継いでいたりする方が多いので、M&Aをすると会社がなくなってしまうのではないかと感じる方が多いのかもしれません。しかし、M&Aは中小企業を淘汰するものではなく、遺すための方法なんです。なくなるのではなく、強くなって未来へ繋いでいく。そこの部分にイメージと実態の乖離があるので、もっとプラスの実態を知ってもらうための努力が必要だと考えています。最近は、M&Aをした経営者が、やってみた結果や想いを公表してくれることも増えました。会社を売ったオーナーが、「人生で一番幸せを感じています」という嬉しいお手紙をくださることもあります。そういった経験者の方々のメッセージを発信することで、ギャップを埋めていきたいですね。

荒波:M&Aを検討する場合は、まず何から知っていくのがいいでしょうか。

渡部:売り手も買い手も、まず自社の企業価値を理解する必要があります。会計上の計算だけでは、ずれてきてしまうので、事例に基づいてきちんと計算することが大事ですね。実際にいくらで売れるのかを知ると、じゃあいくらにしたいのか、そのためにはどうすればいいのかを考えるきっかけになります。さらに、自社にないものとは何か、どこと組むと一番企業価値が上がるのか、と考えていくことで新たな戦略が見えてくるはずです。上場・未上場に関わらず、企業が自らの価値をしっかり捉えていくべき時代だと思います。
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